「実名報道」そのものの問題点を指摘する土橋弁護士だが「少年審判が公開されていないことが社会の理解につながっていない面もあるのではないか」とも話す。

(土橋央征弁護士)
「(少年審判では)少年自身の出生の秘密みたいなことも含めて取り扱うことがあり、そういったことをなかなか公開するのは難しいかなと思います。ただ、少年審判の内容や、どういうシステムになっているかということを、報道機関や社会の方々と共有する方法があればなと個人的に思っているのですね」

正解は・・・? 突き付けられた根本的な問題

犯罪に対し社会の向ける目がより厳しくなる一方で、実名報道によって、若くして道を踏み外してしまった人のその後の人生まで左右してしまってよいのか。デスク、管理職含め、約1か月にわたり迷い、考え続けた。正解は事件ごとに違うのかもしれないが、ブレず、逃げずに判断していきたいし、もし正解があるとすれば、これまで以上に取材を丁寧に重ねることしかないのだと思う。

寝屋川事件には、単に特定少年の実名報道をどうするかという点に留まらず、報道機関が事件報道そのものにどう向き合うかという根本的な課題を突き付けられた。容疑者、被告だけでなく、被害者や遺族を実名で報じるとはどういうことなのか。逆もしかりで、匿名で報じる理由や意味は何なのか。私たちが当たり前としてきたことを常に見直していく必要がある。


清水貴太(MBS報道情報局 大阪司法記者クラブで司法キャップ 入社9年目 法学部出身 これまで大阪府庁・大阪市役所・経済・大阪府警の担当記者を経験)