逮捕後も取材は続いた

ただ、検察が発表に及んだからといっても、すぐに「実名報道」につながるわけではない。報道機関としてMBSでは様々な側面から事件について取材する必要があると判断した。少年法61条により、これまで20歳未満の被疑者(被告)の実名を報じることは禁じられていた。MBSとして特定少年の実名発表という初めての経験に直面しており、その判断は「重大」だった。大阪府警記者クラブでは被害者周辺取材、寝屋川市の現場近くの住民ら地元の受け止めなどを改めて取材した。発生から1か月あまり経っていたが関係者、地元の人たちは事件のことを鮮明に覚えていた。
「実名」か「匿名」か現場の声は…

「事件については、悲しかった、仲の良い先輩が巻き込まれ、ただただ悲しい。容疑者が少年Aとか匿名やと身を守れるという感じがする。更生のためにも名前は出すべき」
(70代女性 被害者の近所に住む住民)
「被害者は近所に住む知り合いで、身内みたいに感じている。遺族の気持ちを考えると、もうそっとしておいて、名前出したところで帰ってはこないからという思いと、こういう事したら名前出るというのをちゃんと見せるべきという思い、どちらもあって実名にすべきか匿名にすべきか答えが出ない」

「事件については他人事と思えない。家が近くて、自分の子どもも18歳の息子で、被害者の男性のことも知っている。ただ、親の立場としては18歳と言っても子ども。実名報道にするかは、殺人などなら実名にするべき」
静かな住宅街で起きた今回の事件。再度の取材を通して、地元住民にとって恐怖を感じる
事件で、影響は大きかったのだと改めて感じた。そして「実名か、匿名かどちらを望むか」も問うた。被害者を知るほとんどの人が容疑者を「実名にすべき」と話していた。一方で「名前を出したところで被害者は帰ってこない」「その世代の子を持つ親の立場として、18歳19歳はまだ子ども。刑によって実名を出すべきか判断すべき」と逡巡する人もいた。
「実名か、匿名か」。被害者の遺族こそどちらを望んでいるのか、どのような考えを持っているのか。記者としてぜひ聞くべき問題であったが、担当弁護士を通して取材を控えるよう要請され断念せざるを得なかったのが心残りではある。