どう向き合う「特定少年」事件

今回、現場を中心に取材を尽くした中で言えば、見えてきたのはやはり20歳の青年が金を奪う目的の男らから襲われ、命を落としたという厳然とした事実であった。そして、事件が地域の人に大きな不安を与え、被害者の知人はみな深い悲しみを感じていた。事件事故、災害、どんな現場でもそうだが不条理な死に直面すると、やりきれない気持ちになる。今回も、同じ気持ちを抱いた。取材結果とともに警察記者として抱いた所感をデスクに伝えた。
かくして検察は特定少年2人の実名を発表した。ただ、当局側の発表基準ははっきりしていないという指摘もある。例えば去年4月、新潟県柏崎市で制限速度を大幅に超えて事故を起こし、同乗者を死亡させたとして危険運転致死の罪に問われている大学生の少年(当時19)について実名を発表しなかった。おそらく取材を進めれば、このケースも被害者にとっては不条理な死ではあるはずだ。また、死亡していなくとも悪質な少年犯罪は起きている。
今回の寝屋川事件では、実名匿名について報道機関で判断は分かれた。おそらくそれぞれのメディアの判断や思考の過程には、たった1つの正解というものはないのだと思う。「匿名」「実名」を分けるものは何なのか、線引きはどこにあるのか…どれだけ難しい判断となろうとも向き合っていかなければならないのである。「特定少年」問題においても納得できる報道をするために、今後も現場の声に寄り添い取材をしていきたい。
法花直毅(MBS報道情報局記者 大阪府警記者クラブキャップ 記者歴12年 事件・事故、災害のほか、宗教・LGBT・ハンセン病元患者など社会問題を取材)