「特定少年の実名報道」について、テレビ放送局の報道担当者は何を取材し、どう判断を下したのか。取材によって得た当事者や専門家の証言、それを受けて警察記者、司法記者、統括デスクはそれぞれ何を感じ決断したのか。現場の実態をまとめる。主題はタイトルにある通り、今年3月に起きた大阪府寝屋川市で20歳の男性が刺殺された強盗致死事件において、犯行に関わった2人の特定少年をめぐる実名報道についてだ。

今年4月から改正少年法が施行され、検察当局から発表された特定少年の実名を報道機関の判断で報じることが可能になった。寝屋川の事件は山梨県の殺人放火事件に次いで全国2例目、近畿では初めての実名発表となった。従来は少年法61条で禁じられてきたものが「解禁」されたわけだが、報道各社における実際の判断は相当に困難なものだったと考える。

そこでMBSで今回の報道に関わったメンバーが、それぞれの視点や考えを形にしておくことが有益だと考えた。事件の取材にあたった警察担当キャップ法花直毅、実名発表する検察当局に向き合う司法キャップ清水貴太、そして実名報道の判断でデスクを担った大八木友之の3者の視点から見た特定少年の実名報道とは。

それぞれの本稿に入る前に事件概要やMBSとしての判断などについて以下簡単に記します。

【事件概要・特定少年の実名発表・MBSの判断など】

今年3月1日、大阪府寝屋川市の路上で20歳の専門学校生の男性が男女4人に襲われ、刃物で刺されるなどして死亡しました。大麻の売買が事件の背景にあったとされています。男女4人は男性が所持していた現金13万円が入ったバッグを奪い逃走しましたが、後に警察に逮捕され、4人とも強盗致死罪で起訴されています。

事件の一つの注目点は犯行に関わった4人のうち2人が19歳と18歳の男であったこと。今年4月から施行されている改正少年法では18歳19歳は「特定少年」に該当します。民法の成人年齢が18歳に変更されたことに伴い、少年法においても20歳に満たないものの18歳19歳について「特定少年」として大人に近い扱いとする規定が設けられました。この規定に沿う形で、検察は裁判員裁判対象事件を中心に起訴時に「特定少年」の実名を発表する方針をとっており、報道機関は各自の判断で実名報道が可能になりました。これまで少年法61条で少年の氏名や容貌などの報道が禁じられてきたため大きな転換点を迎えています。

特定少年の実名発表は山梨県の殺人放火事件が全国初の事例となり、今回の寝屋川での強盗致死事件が全国2例目、近畿では初めての実名発表となりました。MBSでは寝屋川での事件で、大阪地検が2人の特定少年を起訴した4月28日、地上波テレビ放送で実名、WEBでの配信記事ではインターネットの特性を考慮し匿名で報じています。以下がテレビ放送で示した見解です。

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MBSでは、特定少年の被告を「実名」で報じるかどうか、事件ごとに犯罪の重大性や地域や社会に与える影響の大きさ、深刻さなどを考慮して判断することにしています。今回、寝屋川の事件については強盗目的で人の命が失われた結果の重大性や地域社会への影響の大きさなどを総合的に判断した結果、2人の「実名」を報じることとしました。
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※なお本稿においては寝屋川で男性1人が亡くなった強盗致死事件を「寝屋川事件」と表記します。(文責:大八木友之 筆頭デスク兼MBS統括編集長)