熊本県の最北端「小国町のわいた温泉郷」で土日だけ営業するコーヒー店「地熱珈琲」。

来店した客「地熱を使うといったら今までは蒸し料理くらいしかなかった。コーヒーっていうのは珍しい」

店主は福岡県出身の山本美奈子さん。7年前、福岡市から小国町に移住してきました。

きっかけは観光で訪れた杖立温泉の景色。

山本さん「すごく自然の中に人が暮らしているって感じがするじゃないですか。かっこよかった、一目ぼれしましたね」

杖立温泉街の一角にある民家に「美奈子別荘」とかかげた表札。山本さんの住まいです。

「見て感動したのはこの部屋の、ここからの景色。ちょうどこうやって座るとですね、これが枠みたいに見えるんですよ」

居間の窓に広がるのは目の前を流れる川と河原、そして木々の緑と鳥たちの姿でした。

「自分の家からの景色がこれって最高やねと思いました」

そして、野菜を敷き詰めたせいろを持って向かったのは、玄関前にある「蒸し場」。

コンクリートでかためられた蒸し場のパイプからは勢いよく蒸気が吹きだしています。温泉郷ならではの光景です。

「こっちに来てますます四季のものを食べるようになりました」

この地域では、温泉の蒸気が生活の一部になっています。山本さんも、この蒸気の熱を使って調理をします。

「この物件を見させてもらうときに家を見る前にこの蒸し場を見て決めました」

蒸し上がった野菜をおいしそうに頬張ります。

「私、結構福岡大好きで快適に過ごしていたんですけど、都市部ってとにかく物事のスピードが速いし、モノで溢れている。こっちに来ると基本的に何もないじゃないですか。だから自分にとって必要なものが何なのかとか、はっきりわかるようになりました」

温泉街に住んで7年、地域の人はみんな顔見知りになりました。

地元の男性「飲み友達です。山本さんがたいがい杖立のことは知り尽くしてしまったから。私たちはそれに従っていくだけ」

二人で朗らかに笑いあう姿から山本さんと地域の人たちの良好な関係性がわかります。