「お前が殺した4人にな、謝れ、謝れ、お前」

<録音テープのやり取り(逮捕から18日目)>

取調官A
「いつまで未練がましいこと言ってるだ。やったことはやった、申し訳ないと、それが本当の遠州男児だろ」

袴田さん
「すいません、小便行きたいですけどね」

取調官A
「小便は行きゃあええがさ、やるからな、小便行くから。その間にイエスかノーが話してみなさいって言うじゃないか」

取調官B
「警部さん、トイレ(連れて)行ってきますから」

取調官A
「便器もらってきて、ここでやらせりゃいいから」

この後、取調室で用を足す様子が録音されていた。そして、逮捕から19日目。取調べ官の追及に対しすすり泣く声が。

<録音テープのやり取り(逮捕から19日目)>

取調官
「お前は4人も殺しただぞ。お前が殺した4人にな、謝れ、謝れ、お前。お前は、4人殺した犯人だぞ。しかも殺して火をつけた。お前が流した涙を墓前へ持って行ってやるよ。お前が流した涙を墓前に持って行って、袴田がこういうふうに泣いてますよと言ってやるよ」

袴田さん
「・・・(すすり泣く)」

この翌日、袴田さんは自白した。起訴後に録音されたテープにも自白した様子が残っている。

「こんなもの証拠として認めるわけにいかん」明かされた一審・死刑判決の「真相」

<録音テープのやり取り(起訴後の録音)>

取調官
「君の現在の心境というのはどうかな?」

袴田さん
「大変に恐ろしいことをやったと思っています。僕自身、前からいろんなことは考えていたですが、警察の方も僕本位に考えてくれて、僕のことを思って色々言ってくれて。そういったことが身にしみて一切言って綺麗な体になろうと思った」

2か月後に始まった裁判。袴田さんは自白から一転、容疑を「否認」した。しかし、2対1の“多数決”によって死刑判決が下された。

判決当時は裁判官の間で意見が割れていたことは知られていなかった。しかしその後、ある男性が審理の過程を明らかにした。

故・熊本典道さん。3人の裁判官のうちの一人で当時、熊本さんは無罪を主張したが、他2人が死刑を支持し、やむを得ず死刑の判決文を書いたという。

直後に裁判官をやめたが、熊本さんは罪の意識にさいなまれ続けた。そして40年後、守秘義務を破り、「真相」を告白した。