1966年に静岡県で味噌製造会社で一家4人が殺害された、いわゆる「袴田事件」。東京高検は、袴田巌さんの再審=裁判のやり直しを認めた東京高裁決定に対する特別抗告を断念し、再審が開始されることになりました。事件発生から57年、一体なぜ、これほどの時間がかかってしまったのでしょうか。
1日平均12時間、最も長い日で17時間近い“取り調べ”

袴田巌さん。3月10日に87歳を迎えた。誕生日を祝ってもらうこの瞬間も、その立場は確定死刑囚だ。
死刑執行の恐怖におびえながら過ごした48年間。拘留によって精神的に不安定になる「拘禁症状」が今も色濃く残る。

袴田さんを支えるのは90歳の姉・ひで子さん。2人は半世紀以上、無実を訴え、闘ってきた。
今から57年前の1966年。静岡県の旧清水市にあったみそ製造会社の専務一家4人が刃物でメッタ刺しにされ、火を放たれて殺害された。
この凶悪事件の犯人として逮捕されたのが、従業員だった当時30歳の袴田巖さんだ。
袴田さんは元プロボクサー。その経歴が柔道2段の専務を殺害できる屈強な犯人像と重なった。

これは今から約10年前、静岡県警の倉庫から見つかった取り調べの録音テープだ。
<録音テープのやり取り>
取調官
「なあ、お前がボクシングやってるからボクシングの例をとるわけじゃないが、こうしてお前に突っ込んで話をしたけど、お前はクリンチすると同じことだな」
袴田さん
「なにクリンチって」
取調官
「そうじゃないか」
袴田さん
「だけど知らないことを言えったって、どこまでいったって無理ですよ。殴ったって、蹴ったって、無理ですよ」
袴田さんが逮捕されたのは8月。真夏の空調のない密室で連日、取り調べが続いた。
1日平均12時間、最も長い日で17時間近くにおよんだ。

















