■船内調査や行方不明者の捜索を行う民間業者「日本サルベージ」 その引き上げ技術とは?

観光船の沈没事故から、11日目。天候が回復し、漁船が参加する捜索は、3日ぶりとなりました。これまでに発見されたのは、乗客14人。残る12人の乗客・乗員の捜索が続いています。

水深約115mの海底に沈むKAZU Iですが・・・

第一管区海上保安本部 横内伸明次長
「17時17分に道警の水中カメラが船内に入ったという情報は聞いております」


海上保安庁によりますと北海道警の水中カメラが、開いている船室後方のドアから初めて船内に入りましたが、行方不明者に関する手がかりは確認できていないといいます。



海上保安庁や海上自衛隊も水中カメラによる捜索を続けていますが、海中の潮流が速いことや視界の悪さなどが重なり、難航。

こうした状況から、船体の引き揚げに向けた動きが本格化しています。

斉藤鉄夫国土交通大臣(2日)
「民間事業者の専門的技術を活用しつつ、国土交通省の総力をあげて、引き揚げに向けた準備を開始してください」


海上保安庁によりますと、KAZU Iの船内や周辺の調査、行方不明者の捜索のために特殊な技術を持つ民間業者「日本サルヴェージ」と約8億7700万円で契約。

元海上自衛官で、現在は潜水調査会社を経営する水難学会の安倍副会長は、民間業者が加わることで、今後の作業がスムーズに進むと指摘します。

水難学会 安倍淳副会長
「海上保安庁にも沈んでいる船を揚げる専用船がないので、(専門)業務を行える民間業者に委託されたものだと思う。数では圧倒的に民間のサルベージ会社の方が作業を経験している」

民間業者による船体引き揚げは、過去にも・・・

記者(2002年9月)
「水面から不審船がクレーンによって、ゆっくりと引き揚げられてきました」


2002年に引き揚げられたのは、北朝鮮の工作船です。
前年に、鹿児島県奄美大島沖で海上保安庁の巡視船と激しい銃撃戦の末、水深90mの海底に沈んでいました。

2002年 引き揚げられた北朝鮮の工作船

2010年には、五島列島の沖合で遭難した漁船を、水深約154mの海底から引き揚げ、乗組員10人全員の遺体を収容しています。

現在KAZU Iの状態を確認するため、別の民間業者が所有する多目的作業船「新日丸」が、鹿児島を出航し、知床の現場海域に向かっています。

今後の作業は、どのように進められるのでしょうか。

水難学会 安倍淳副会長
「水中ロボットを使って、現在沈んでいる水深120m付近の船の状況と海底の状況を詳細に調べるという作業が第一義的に行われる。その後に、水深で対応可能な潜水方式の飽和潜水という潜水方式をもって、ダイバーが船内の捜索、あるいは船体の調査、詳細調査に入っていくのではと思う」


水深115mの海底での作業には、「飽和潜水」と呼ばれる高度な特殊技術が必要とされます。



「飽和潜水」は訓練を受けたダイバーが深海の気圧に順応できるよう、特別な加圧タンクで徐々に身体を慣らし、作業に臨む潜水方法です。



船体や海底の調査のあと、大型クレーン船によって、船体の引き揚げ作業が進められるとみられていますが、期間については月単位の時間がかかると専門家は指摘します。

水難学会 安倍淳副会長
「水深が120mをこえると表層の流れ、海底の流れが違う方向に流れる。環境的には風・うねり・水中のにごり・低水温が大きな障害になってくると思う」