知床半島沖の観光船沈没事故から10か月が経ちました。
 事故を起こした「KAZU Ⅰ(カズワン)」は、かつて瀬戸内海を走る定期船でした。波の穏やかな瀬戸内海の船がなぜ、知床の海にやって来たのか?その軌跡をたどります。

岡山・備前市にも知床の事故は衝撃を与えた

 岡山県備前市。目の前に、鏡のように穏やかな海が広がります。知床の観光船事故は、この街にも衝撃を与えました。

田口鉄工所 田口豊作さん
「(知床の海を走るのは)自殺行為ですよ、そんなもん。(全然違うものですか?)全然違う!(平水区域=瀬戸内海と?)波の中に出て(船体を)たたかせたらもたない」

 瀬戸内海で使われる船の整備などを請け負っていた田口豊作(たぐち・ほうさく)さんです。

田口鉄工所 田口豊作さん
「『ひょっとして?』って息子が、『あれ、日生(ひなせ)にいた船だ』って言うので見てみたら、もう横から見たら、まともにその船だったから、なんであんな船があそこ(知床)走っとんじゃ?って…」

瀬戸内海で船の整備をしてきた田口豊作さん

カメラマンリポート(去年5月)
「『KAZU Ⅰ』が水面から出てきました」

 去年4月、知床半島西側のカシュニの滝近くで沈没した「KAZU Ⅰ」です。
 乗員乗客26人のうち、20人が死亡。事故からまもなく10か月が経ちますが、乗客6人が、今も行方不明のままです。

知床の海から引き揚げられたKAZUⅠ(2022年5月)

 知床の事故現場から、南西に1500キロあまり。瀬戸内海に面した広島県三原市を訪れました。

記者リポート
「私の後ろに広がっているのが穏やかな海、瀬戸内海です。『KAZU Ⅰ』は40年ほど前、ここ瀬戸内海で、広島県の本土と生口島を結ぶ定期船として活躍していました」

KAZUⅠが定期船として航行を始めた広島・三原市