宮城県・東松島市。この街の駅に今年1月、1枚のポスターが貼られていた。
しばらく見ていると若い女性たちが次々と写真を撮りに訪れる。話を聞くと、岩手から2時間かけて撮りに来たという人もいた。

ポスターに写る男性は、俳優・宮世琉弥(みやせ・りゅうび)さん、19歳。去年、TBSドラマ『君の花になる』などCMやドラマに立て続けに出演。若い世代を中心に人気を博す俳優の1人だ。

宮世さんは12年前、東松島市に暮らす小学1年生だった。そして、東日本大震災で被災している。しかし、以来12年間、当時暮らしていた場所に足を運んだことがなかったという。思い出すのが辛い出来事も多く、足が遠のいていたのだ。
今回宮世さんは、ある決意をもって地元を訪れることにした。TBS「3.11 震災特番Nスタスペシャル“いのち”」の取材で、その思いに迫った。

小学1年だった当時 車ごと津波に流され…

宮世琉弥さん
「3月11日は“全てが変わった日”かなと思います。あの日が無ければ僕は今、芸能界にも入っていないと思います」

取材初日、真っすぐな瞳で最初にそう語った宮世さん。7歳だった当時どんな経験をしたのか。


宮世さん「海から1km程のところに学校があって、帰り会の途中でした。突然、地震が起きて机の下にもぐって…理科室のガラスが割れて床に散乱してしまっていて。何が起きているんだろうって不安で友達と震えていたのを覚えています」

その後、間もなく母親が学校に迎えに来てくれたのだという。
母の運転する車に乗って宮世さんは学校を離れ、田んぼ道を走っていた。当時、市内の保育園に通っていた妹を「このまま迎えに行くのかな…」と思っていた。

そのとき、車の後ろから這うように津波が迫ってきた。

宮世さん「真っ黒な水がバーッて後ろの方から迫ってきたんです。逃れようと母がハンドルをきったんですが…すぐに追いつかれて、車ごと押し流されて。怖いというよりも、とにかくパニックで」