■「2人きりで話したい」と言われたら?現場でも議論「信頼失っている」

映像業界を変えるために、少しずつ対策も始まっています。
白石和彌監督は、あらゆるハラスメントをなくすため、撮影前に出演者とスタッフに、あるお願いをしたと言います。

映画監督 白石和彌さん:
ハラスメントは一体どんなところから起こって、どういう状況で起きやすいか説明を受けて、こういう時はどういう行動をとるのがいいのか、みんなで意見を出しあったりした。ハラスメントの根底にある相手への尊敬の気持ちが欠けていないか立ち止まって考える「リスペクト・トレーニング」と呼ばれる手法です。

白石監督:
例えば、若い女優さんなどが芝居のことに悩んで「監督、話したいです。みんながいると恥ずかしいので2人きりで話したいです」と言われた場合、どういう対応をしますか?みたいなこととか。

山本恵里伽キャスター:
トレーニングを受けられたキャストやスタッフはどんな反応なのか。

白石監督:
話している内容によっては「これもそういうことなの?」とかはあるんですけど、人間なので誰しも撮影現場でイライラしちゃうこともあるわけですよね。そういう時に、ちょっと声を荒げたりしても「今のリスペクトが足りないんじゃないですか」ということを、非常に声をかけやすくなる。
僕自身もおそらく監督をやりながら、例えば声を荒げてしまったりとかっていうこともあったので、そういうことは改善したいなと撮影しながらすごく感じていた。この作品で“あらゆるハラスメントを許さない”ということを宣言することがすごく重要。

性暴力を含むハラスメントをなくすために、今も試行錯誤を続けています。白石監督:
監督やプロデューサーとか、パワーを持った人たちに特化したトレーニングもあっていいんじゃないかと感じます。映画界全体が変わっていかないと、新しい人が入ってきてくれたりとか、お客さんも安心して見られる作品なのかどうかということも、僕らは今信頼を失っているので、ちゃんと取り組んで信頼を取り戻す必要があると感じています。

■映画界の性暴力 海外で進む「防止策」とは?

小川彩佳キャスター:
海外では映画界での性暴力を防ぐ取り組みがさらに進んでいます。
例えばアメリカでは、「インティマシー・コーディネーター」というんですが、性的なシーンを撮影する時に監督やプロデューサーと、俳優との間に入って調整する役割を担う専門スタッフが入ることが広がっています。
また、韓国では2018年に韓国映画男女平等センターが設立され、セクハラや性暴力の実態調査や相談窓口の他、ハラスメントの予防教育なども行われています。
お話を伺った睡蓮みどりさんは、こうした告発が一過性のものとして終わってしまうことへの恐怖も口にされていました。受け止める私達がどうこれから行動するのかということも問われていると思います。