父親のひざに乗せられてアダルトビデオを見せられ、体を触られたことを覚えています。
小学校4年生のクリスマスの日、性交を強要され、それは中学2年生になるまで続きました。
あやさん(仮名・40代)
「『いい? それともこっちがいい?』と、行為をされることしか選択肢がなくて、『嫌だ』と断ることを教えてもらえない」
まだ子どもだった女性は、その行為が「虐待」だとは、分かりませんでした。

あやさん(仮名・40代)
「『好きだからやるんよ、誰にも言っちゃいけない』とずっと言われてきて、被害に遭っているっていうのが分からない。そのうちそのことが苦痛すぎて自分の頭で考えられなくなっている」

父親の行為はいつしか終わりましたが、自分では気付かないうちに気持ちをぐっと抑え込んだまま、あやさんは大人になりました。
周りの人を信じられず、なぜか生きづらい、苦しい時間が続きました。

そして、きっかけは数年前です。
大好きで頼りにしていた祖母が亡くなります。
そのころからだんだん感情がコントロールできなくなり、何十年も前に父親から受けた性的虐待が、フラッシュバックするようになったのです。
「このままじゃ生きていけない」―。そう思ったあやさんが、わらにもすがる思いでたどり着いたのが、性被害者をサポートするNPOでした。
あやさん(仮名・40代)
「あの建物に入ったら性被害者だって分かるんじゃないかって。そんな行動したことなかったから怖い、怖いで…。でも、ずっと話をただ聞いてくれて、ここはだいじょうぶだってわかった」
相談員との会話を通して、気持ちが少しずつ楽になったといいます。

それから数年経った2020年、裁判に踏み切ります。
父親の性的虐待が原因で大人になってからPTSDを発症したとして、父親に損害賠償を求めたのです。
しかし、去年10月、広島地裁が下した判決は、あやさんの訴えを退けるものでした。
あやさん(仮名・40代 去年10月)
「こんな被害を受けて訴えたのに負けるっていう判決が出ることが理解できない」