10人に1人が「LGBTQ+当事者」というデータも

調査機関・調査方法によって変動はありますが、LGBT総合研究所が2019年に行った調査では、「社会全体の10.0%がLGBTQ+の当事者である」と推定されています。
またある調査では、当事者の8割以上が「職場などでカミングアウトできない」というデータもあります。

「最初から、自分が女の子とは思っていなかった」
「心は男性でも体は女性」・・・横山選手は、大好きなサッカーに打ち込む一方で、幼いころから自分の性別に違和感を抱いてきました。

(岡山湯郷Belle 横山久美 選手)「最初から、なんだかあまり『自分が女の子』というふうに思っていなかったので。『自分らしく、ありのままで生きたいな』という風に思っていたので、ちょっと女の子扱いされると、『やっぱそう見られているんかな』みたいな感じで思っていました」
バイデン大統領から横山選手へ「あなたの勇気を誇らしく思う」

「こだわりはない」と話す一方、トランスジェンダーであることを公表をすると「批判を受けるのでは」と感じていたといいます。「ありのままで生きたい」...そんな横山選手を後押ししたのは、2020年に活動拠点を移したアメリカのチームメイトでした。

(岡山湯郷Belle 横山久美 選手)「アメリカでも、人種差別だったりとかLGBTQとかを嫌っている人たちもいるとは思うんですけれど、NWSL(米国女子プロサッカーリーグ)自体がそういうことに対してすごく真剣に取り組んでいて」
「チームメイトから『隠さなくていいんだよ』ということもすごく言われましたし、『一人称なんて呼んだらいい』ということもすごく聞かれましたね」
「『He』が良いのか『She』が良いのかとうことは聞かれました。日本語だと、そういったことはあまり無いので。自分は気にしていないから『みんなが呼びやすいように呼んで』って。そういうところから変わりましたね」


2021年6月、横山選手はトランスジェンダーを公表、チームメートからも大きな祝福を受けました。その祝福は大統領からも。

(バイデン大統領のツイッターより)「今週カミングアウトした、著名で人々を感動させるアスリート・横山久美へ。私は、あなたたちの勇気をとても誇らしく思う」
「あなたたちのおかげで、世界中の数え切れないほど多くの子どもたちが、自分自身に対して新たな見方をするようになった」

(岡山湯郷Belle 横山久美 選手)「チームメイトが、バイデン大統領のコメントを教えてくれて。『すごいよ。マジでおめでとう』みたいな。言われたのがびっくりでしたね」
「『みんなから批判されるんじゃ』と思っていた気持ちもあるので、そのように言われると本当に思っていなかった。そんなに反響が出るとも思っていなかったので、すごくうれしい気持ちにもなりました」
アメリカで結婚「パートナーを支えていきたい」

また一昨年11月には、アメリカでパートナーの女性と結婚。国内では法的に無効となりますが、横山選手は来月から始まるシーズン中も変わらず、大好きなサッカーをプレーし、パートナーを支えていくと意気込みます。
同じ志を持ちプレーする当事者に、「夢をあきらめて欲しくない」、その一心からです。
(岡山湯郷Belle 横山久美選手)「『公表してもサッカーができるんだ』と思っていただきたいですし、何かをやるというよりかは『自分がサッカー選手でありつづけて結果を出すのみ』かなと思います」

「ありのままの自分で普通に生活して、サッカー選手として結果を出すだけだなと。小さい子たちが『性の悩み』でサッカーをやめない環境づくりをしたいなと思っています」
ようやく「LGBT理解増進法」の議論が本格化しそうな日本の現状は
(スタジオ)
海外で長くプレーし、アメリカで結婚した横山選手は、「公表するのが全て正解ではない」とした一方で、日本と海外との「LGBTQ+当事者を取り巻く環境」にギャップを感じた、とも話してくれました。

まだまだ差別や偏見が残っている中、海外、特に欧米各国では、このように法律でLGBT差別を禁じるケースも多いのです。国内でも、今国会内で「LGBT理解増進法」の議論がようやく本格化し、法整備も前に進もうとしています。

また同性同士の婚姻が法的に認められていない日本ですが、自治体が独自に当事者カップルに対して「結婚に相当する関係」とする「パートナーシップ制度」も全国255の自治体が導入しています。
「多様性を認め合える社会」に近づくためにも、より一層の議論の活発化が期待されます。