監禁された子ども達がロシア兵からライフルや爆弾を渡されることも
ロマンさんは、祖母と妻、そして当時、生後半年だった娘と共に監禁された。祖母は20日後に亡くなったという。

監禁された ロマンさんの妻 エフゲニアさん
「祖母はここで死んだ。薬や必要なものがなく、息苦しく食料も不足していた。子どもと一緒に地下室にいるのはとても大変だった。
「歯が生える時期で、高熱が出ても解熱剤がなかった。扉が閉められていて息苦しくなると、娘を抱いて扉の近くに行った。(扉に)穴があいていて、空気が入ってきた」

村瀬キャスター
「壁を見ると、子どもたちが描いた絵が描かれています。地下空間で子どもたちも、ずっと監禁されていたんですけど、絵を描いて、何とか子どもたちの心を保っていたということです」
子どもたちは、懐中電灯や食料が配られるときのわずかな灯りのもと、拾った絵具などで絵を描いていたという。だが、そんな時間もつかの間。子どもたちは常に緊張状態に置かれていた。

監禁された住民 イワン・ボルグイさん
「酔っぱらったロシア兵が来て、懐中電灯で住民の様子を確認し、子どもにライフルを渡して『散歩してこい』と言ったり、爆弾を渡して『ここを引っ張ってはいけない、引っ張ると爆発するよ』と話したりする」
「兵士が入ってくると、みんなパニックになって怖がっていた。母親たちは子ども隠し、若い女性も連れ去られないように隠れていた」
ロシア軍の撤退後も子ども達に残る“心の傷” 小児精神科は“深刻”と指摘
2022年3月30日、ロシア軍が村から撤退。一か月近くに及んだ監禁生活から住民が解放された。だが、子どもたちの心には深い傷が今も残っている。

ロマンさんの娘・ポリナちゃん。今は1歳半になったが、その幼い心にも…。

父・ロマンさん
「娘をここに連れてくると雰囲気で感じるのか、いつも泣く。赤ん坊も分かっているんです」
母・エフゲニアさん
「(娘は)トラウマになっている。娘は地下室を出てから入院し、治療も受けた。今でも夜の睡眠は不安定」
キーウで治療にあたっている精神科の医師は、ウクライナの子どもの現状は深刻だと話す。

小児精神科 アルチョム・ニコラエビッチ 医師
「小さい子どもの症状は“夜尿症”“不安症”“不眠症”“悪夢”など。全体的に母親から離れない“退行”がみられる」
「診察を受けるのは、特に目立った症状の子ども。しかし、残念ながら長期間治療を続けられる金銭的に余裕のある保護者ばかりではない。治療を受けられなかった子どもは、成長後にカウンセラーをまわっても改善されない。適切なタイミングで必要なケアを受けていないから」