財布を取り上げられた合宿中…「気がついたら服の中に」

食べ吐きによって厳しい食事制限のストレスから解放され、走ることだけに集中することができました。次第に大会でも結果が出るようになり、世界大会で活躍するなど「原裕美子」の名は知れ渡りました。
世間から注目されると同時に、食べ吐きをしていることを周囲に相談できなくなり、病院にも行きませんでした。摂食障害と診断されたのは食べ吐きを始めて10年後のこと。

摂食障害は「必要な食事をとらない」「食べ過ぎる」「食べた後に吐く」などの異常な食行動がコントロールできなくなる心の病気です。

2007年、25歳の時、原さんはついに食べ吐き用の食料を万引きするようになります。初めは中国での合宿中でした。監督に財布を取り上げられ、食べ吐きができないことへのストレスが限界に達してしまったのです。
(原裕美子さん)
「食事だけでは、食べ吐きをしていたから食べるものが足りなくて、近くの市場に抜け出して行っていたんですね。目の前にあるものが全ておいしそうで食べたくて食べたくて。気がついたら服の中、ありとあらゆるポケット、ポケットだけではおさまらずに服の中とかに入れちゃってて」

初めて逮捕されたのは2012年。その後、医師には精神疾患の窃盗症と診断されました。2018年、執行猶予中に7回目の逮捕。盗んだのは382円相当のキャンディーやクッキーでした。
(原裕美子さん)
「もうしない、絶対やめなきゃって自分に誓うんですけど、また繰り返してしまう。だめな自分なんだ、だめな人間なんだ、なんでこんなに心が弱いんだろうというふうに思っていました」