侵攻“長期化”への決意を示した演説 アメリカを強くけん制する狙い

モスクワ支局長の中継です。
今回の演説のポイントはどこにあると考えますか?

モスクワ支局長:
侵攻のさらなる長期化に向けた決意を示した演説だったと言えます。
プーチン大統領はウクライナの侵攻を巡り、「これからも我々が直面している課題を解決し続ける」と語り、あくまで侵攻を継続していく姿勢を強調しました。

そして、2024年3月に予定されているロシア大統領選挙について、「法律にのっとり厳格に実施する」と述べ、侵攻が続くなかでも大統領選を行うと明言しました。事実上、大統領選に向けた選挙キャンペーンが始まったとの見方もあります。

また、プーチン大統領は新START(新戦略兵器削減条約)と呼ばれるアメリカとの間に唯一残る核軍縮の枠組みを一時停止すると一方的に表明しました。
冷戦期から形を変えながらも続いていた米露間の核軍縮の枠組みが事実上なくなる形で、ウクライナへの軍事支援を強化するアメリカを強くけん制する狙いがあるとみられます。

「戦場でロシアに勝つことは不可能」 今後中国がどこまで踏み込んでくるかが鍵

山本恵里伽キャスター:
プーチン大統領は約2時間に及んだ演説の中で、ウクライナの侵攻を改めて正当化しました。

▼演説のポイント
・ロシアへの脅威を取り除き、安全保障を確保するため必要な課題を解決する
・戦争を開始したのは西側諸国で、我々は終戦に向け力を入れている
・戦場でロシアに勝つのは不可能
・制裁による経済的危機は克服された

小川彩佳キャスター:
この演説のどこに注目されますか?

笹川平和財団 畔蒜泰助 主任研究員:
一言あげるとすれば、ウクライナ侵攻はロシアの存在に関わる戦いだということを言った。この発言からも絶対負けられない戦いであり、戦い続けるのだという意思がにじみ出ているということだと思います。

全体として見た時に、ウクライナ侵攻に対しては基本的に今まで発言したことの繰り返しになっている側面はあったかと思います。

小川キャスター:
実際、ロシアの独立系世論調査機関によりますと、軍事侵攻が1年以上続くと答えた方が43%にのぼっている。ロシア国内の一般の方々も長期化するという意識を持たれていることになりますが、いつまで続くと考えますか?

笹川平和財団 畔蒜 主任研究員:
ロシアの財政を見た時に、西側でもいろんな調査が出ているわけですが、言われているところでは少なくとも財政面で見たら2年くらいはロシア戦争継続能力があるのではないかということがひとつ。

それから、装備品の生産などで非常に重要な鍵を握っているのは半導体です。半導体に関しても、実は中国経由で入っていて、侵攻当時はガクンと減ったが2022年9月くらいから半分くらいまで輸入量が戻っている。そのほとんどが中国・香港経由だと言ってますので、中国の支えがロシアの戦争を継続するうえで非常に重要な鍵を握っているということだと思います

小川キャスター:
中国の存在によって余裕が生まれていると?

笹川平和財団 畔蒜 主任研究員:
余裕とまでは言えないまでも、ウクライナは西側から全面的な軍事支援を受けているなかで、ロシアも財政的には石油を売って、あとはこれまでの資金を貯め込んでいるものがありますけど、装備品・半導体などは非常に手に入りにくいということで、その点は中国が主力で入ってきてるということです。

小川キャスター:
中国が今後どう絡んでくるかが戦況を大きく左右していくということですね?

笹川平和財団 畔蒜 主任研究員:
今、実は中国の王毅政治局員がモスクワを訪問していて、22日中にもプーチン大統領と会うのではないかという話もあり、その先に春にも習近平国家主席が訪ロするのではないかという情報も出てきてますので、そういう流れから中国もロシアに対して一歩踏み込んでくることになると、ロシアとしてもこの戦争の継続の可能性が高まることになると思います。