「罰金とすべきでない」流れを決めた自民党内の声

2月8日の朝8時。自民党本部で開かれた「総務部会・厚生労働部会・デジタル社会推進本部合同会議」。
この場で、「マイナンバーカードと健康保険証の一体化に関する検討会」における検討状況が示され、有料化案も話題に上った。
出席した議員の多くが反対したという。

出席した議員
「保険料を払っているので、義務でないマイナカードを取らなかったからと言って負担させるべきではない」
「カードを取らないから罰金、みたいに受け取られることをやってはいけない」

こんな意見が相次いだのだ。
この日を境に、有料化案は急速にしぼんでいく。

そして、17日の閣議後会見。
加藤厚生労働大臣は、資格確認書の有効期間は「1年を限度として各保険者が設定」すると発表した。現在の紙の保険証についても「1年間は有効とする経過措置を設ける」という。

有料化の議論について記者から問われると、「議論すら存在しなかった」と言い切った。

加藤厚生労働大臣
「政府の中でそういうことを議論してたわけでは全くありません。したがってこういう結論になるのは当然のことだと私は考えています」

今回の結果を受けて、関係者はこうつぶやいた。「今回は厚労省が頑張って押し切ったな」

普及を阻む“対面”の壁

カードの取得促進に向け、有料化という“ムチ”を封じられた政府。今後はどうやって取得率を上げていくのか。
一番のハードルとされているのが「対面」の壁だ。現在の制度では、カード申請はオンラインや郵送でもできるが、受け取りの際に必ず本人が役所を訪れ、対面で本人確認したうえで交付されることになっている。役所が開いているのは原則平日のため、社会人などには大きなハードルとなっている。

そこで今回政府は、特定の郵便局でオンラインによる本人確認を行ったうえで、郵送でカードが受け取れるよう、制度化を目指すことを決めた。また、新生児やカード紛失時の再交付、海外からの転入者などを対象に新たに「特急発行」の仕組みを、2024年秋までに創設する。これまでは申請からカードの受け取りまで1か月程度かかっていたが、「特急発行」では本人が窓口で申請すれば最短5日で郵送で交付できるようにするという。特に新生児については、出生届と一緒にカード申請をすることで生まれた赤ちゃんがすべてカードを取得できるようにできないか、検討されているという。

また、これまで代理人がカードを受け取ることは「病気、身体の障害その他やむを得ない理由のみにより役場に出向くことが困難であると認められるとき」のみ認められていた。この条件を大幅に緩和することで、たとえば小中学生については本人確認書類で年齢を確認することで、保護者らが受け取ることも今後、可能にするという。