幻に終わった“有料化案”

2月17日午前の閣議後会見。
河野デジタル大臣は、来年秋に紙の保険証が原則廃止されることを受け、次のように述べた。

河野デジタル大臣
「マイナンバーカードを保険証として使っていただくことが基本ですが、紛失をしてしまったとき、あるいはベビーシッターなど第三者が同行して資格確認をするような場合に、『資格確認書』を提供することといたします」

政府は、来年秋をめどにマイナンバーカードを保険証として利用する「マイナ保険証」に一本化する方針だが、河野大臣は、カードを持たない人のために「資格確認書」を発行すると発表した。
会見で河野大臣は、こう付け加えた。

河野デジタル大臣
「こうした資格確認書は無償で提供をするということにいたします」

「資格確認書」は無償、つまり手数料無料で発行する。政府内で検討されていた、“有料化案”が幻に終わったことが宣言された瞬間だった。

河野大臣VS加藤大臣

「資格確認書」の有料化案というのは、デジタル庁を中心に出てきたものだ。
2022年秋、河野デジタル大臣が「紙の保険証を廃止し、マイナ保険証に一本化する」と宣言したとき、「紙の保険証を廃止するのに、また別の紙の証明書を発行するのはナンセンス」「そもそも保険証廃止する必要ないのでは」、こんな声が相次いだ。また、デジタル庁内には「マイナンバーカードによって、公的・民間も含めて社会的なコストが下がる。カードを持ちたくない人は、そのコスト減の効果を少なくしている分だけ対価を払う必要が出てくる」という意見があった。
カードを持たない・持ちたくない人に対しては、従来通りのサービスを提供する代わりに、より割高の対価を要求する、高速道路でのETC(電子料金収受システム)のようにすべきだ、という考え方だ。
複数の政府・与党関係者によると、河野デジタル大臣はこういった考えに基づき、「資格確認書は有料とし、その有効期間もできるだけ短くすべき」と訴えていたという。

一方、同じ閣僚でも、加藤厚生労働大臣は、発行料は無料とすべきというスタンスだった。「保険料を収めているのだから、従来と同じ保険診療を受けることができるのは当然の権利」という主張だ。デジタル庁の中でも、一部の幹部はこのような考え方だった。

「有料」か「無料」か。有効期間は「1~3か月程度」なのか、それとも「数年」とするのか。議論はしばらく平行線をたどったという。