短い時間でしか働くことのできない、障害のある人たちがいる。そのような障害者が就職しやすくなる法律が2022年12月に国会で成立した。2024年4月から始まる制度に障害者や企業側からは期待の声があがる一方、「雇用の質」を保つことが出来るのかという課題も見えてきた。

「働きたい」けど見つからない就職先 知的障害のある三宅さん

知的障害のある三宅賢司​さん(取材当時20歳)

「ただいまより昼礼を行います。よろしくお願いします」

大きな声で元気に昼の会の進行をするのは三宅賢司​さん(取材当時20歳)。
ここは東京・足立区にある、障害のある人が就職するために必要な知識やスキルを学ぶ、「就労移行支援事業所WEL'S ARK」。NPO法人が運営し、この日は自閉症や知的障害などのある4人が集まり、朝から夕方まで支援員と作業の練習に励んでいた。

三宅さんは知的障害があり、自分の考えを相手に伝えることが苦手なときがある。特別支援学校を卒業し、「事務の仕事がしたい」という目標を叶えるために約2年間この施設に通い続けている。

知的障害のある三宅賢司​さん(取材当時20歳)
「僕の目標は一度も間違えないようにすること。ぎりぎりまで頑張ってぎりぎりまで踏ん張っている」

この日、取り組んでいたのは、郵便物の仕分け作業。約40分で200枚もの封筒を決まった棚に仕分けていく。
2年間の練習で作業のスピードは2倍ほどにまであがり、この日も制限時間内に間違えずに仕分けるという目標を達成した。さらに、この施設で指示通りに作業をすることや働くための言葉遣いとマナーも身についた。
三宅さんが頑張る理由は、働いて周りの人へ“恩返し”をするためだ。

三宅賢司​さん
「働いて誰かの役に立ちたい。僕のことを気遣ってくれる人がいるので」

しかし、「働きたい」という強い願いはまだ叶っていない。

三宅賢司​さん
「面接はされていましたけど、就職するどころか落ちちゃったりすることもある。(理由は)姿勢とか下向いちゃったり、そんな感じです」

企業の面接に挑戦したこともあるが、良い返事は来ず、「就職活動は大変だ」という。