4月6日、ウクライナの子供たちがバチカンを訪れ祖国の悲劇を教皇に伝えた。
教皇はブチャなどの虐殺を非難したうえでこう述べた・・・
フランシスコ ローマ教皇
「残酷で浅はかな戦争に引きずり込まれ暴力と破壊に苛まれているウクライナに平和がありますように この苦しみと死の恐ろしい夜に希望の新しい夜明けが早く訪れますように」
カトリックの頂点に立つ者が平和を祈るのは至極納得のいくところだが、同じキリスト教でも今回のウクライナ侵攻を支持する宗教もある。キリル総主教率いるロシア正教だ。
戦争がキリスト教の東西対立を顕著にした形だが、ハーバード大学で比較宗教学を学んだパックンは言う。
パトリック・ハーランさん
「そもそもカトリックとロシア正教が仲良かったかといったら(11世紀の分裂以降)ずっと対立はしている。2016年に初めてローマ教皇とキリル総主教が会って共同宣言を出した。これが歴史的な友好関係を築くターニングポイントで、宣言には「戦争をやめよう 平和を訴える」という内容が盛り込まれていた。しかし、今回キリル総主教がプーチン政権の乱暴な動きを支持することで、ローマ教皇を含め全世界のキリスト教徒が裏切られた・・・」
ここに名前が挙がったキリル総主教とプーチン大統領、実は親密な関係にある。キリル総主教がトップに立つロシア正教会は、ロシア国民の7割を信奉する、いわばロシア人の心のよりどころだ。
■「総主教になってから国に歩調を合わせ始め、知的なブレーンは教会を離れていった」
キリル総主教とはどんな人物か・・・。プーチン氏と同じサンクト・ペテルブルク出身。
2009年総主教の座に就き、今年75歳。3月、世界教会協議会に送った書簡は、まるでプーチン氏の言葉のようだ。
「ロシアを公然と敵視する勢力が国境に迫ってきた。NATOは軍事力を年々毎月増強している。最悪なのはそこに住むウクライナ人やロシア人を再教育しロシアの敵にしようとしていることだ」
驚くのは、キリル総主教について英タイムズ紙は元KGBのエージェントだとしていること。
ロシアとウクライナの宗教を研究する専門家に聞いた。
九州大学講師 高橋沙奈美さん
「ペレストロイカで明かされた秘密文書でロシア正教会の高位聖職者が秘密機関のコードネームを持っていたことがわかった。でもそれは本人たちの意思だったのか、それとも宗教弾圧が厳しかったソ連時代、国の一機関になるしか生き残れなかったから、そういう役割を持ったのかはわからない」
キリル氏は総主教になる前の90年代、進歩的な考えを持ちリベラルで多様性があり、教会内でも有望だったと高橋氏は言う。しかし・・・
九州大学講師 高橋沙奈美さん
「プーチンの歩んできた道と重なるかもしれなませんが、キリルも正教会のトップとして活動していく中で、自分の活動を国に合わせていくようになった。すると、かつてキリルの近くで働いていた非常にリベラルで知的なブレーンの人たちがどんどんロシア正教会を離れていった。2010年代に入ってからのことですね。それまでは、政府に批判的な人たちも教会内で活動できた・・・」
一体何がキリル氏を変えてしまったのだろうか?