アジアを制して「新しい景色」へ
2021年東京オリンピックは、彼女にも多大な影響を与えた。この時、世界選手権への出場経験もなく、大学生だった嶋田は自ら申し込んで、ボランティアとして空手会場に入った。高校2年から体重無差別の全日本選手権等へは出場し、当時で「日本一」へのイメージはあったが、「世界一」は思い描くことが出来なかったという。それが初のオリンピック採用だった日本武道館で、ヒリヒリした緊張感と勝負にかける選手の鋭い目つきや気合に、これまでに感じたことのない興奮を覚えた。「これが世界最高峰の試合。自分もこういうところで優勝し、そこで新しい景色を見てみたい」。今までにない感情が湧き出た。
日本代表になり、昨年は非オリンピック競技が集まったワールドゲームス(中国・成都)に出場した。優勝こそ逃して2位だったが、初めて空手単独の国際大会以外の総合大会に参加した。驚かされたのは、選手村での待遇。食事の豪華さ、余暇時間用のスペースの設置はもちろんだが、一番驚いたのは洗濯機の数だったという。「空手だけの大会だと、宿舎に洗濯機が1台しかないこともしょっちゅうで、空手着を部屋の浴槽に入れ、足踏みして洗って干していた。総合大会は違うんだな、とビックリしました」
残念ながら空手は東京以降、オリンピックから外れている。だからこそ、このアジア最大の総合大会であるアジア大会での勝利が意味を持つと考えている。「日本発祥だが、競技としての空手は日本人に浸透していない。オリンピックも1回では寂しい。空手をやっていない人たちが見てくれる舞台で、金メダルを取ることは大きなこと。自分の試合は2日目の21日だが、初日の20日から空手勢は頑張ります」
実は女子61㎏級は世界選手権で3位にチュニジア選手がいるが、他の1位から3位まではアジア勢。世界1位のイラン選手が今回は68㎏級にエントリーして不在だが、アジア選手権決勝で勝ったカザフスタン選手や、世界2位の中国選手もいる。勝ち抜くのは楽ではないが、その勝利の先にオリンピックであこがれた世界の頂点があるのは間違いない。
初出場のアジア大会。そこで嶋田は真のエースになり、新しい景色を見ることが出来るのか。
(スポーツライター/竹園隆浩)

















