急成長を支えた「エキセントリックトレーニング」

4歳上の兄にくっ付いて3歳で空手を始めたという嶋田は千葉県四街道市出身。秀明八千代高ではタイトルには届かず、硬軟織り交ぜたテクニシャンだったが、線の細さのある選手だった。だが、大学進学後、背中の厚みが増し、力強さが出た。急成長の秘密を握るのが昨年から取り入れたエキセントリックトレーニングだ。これは重いバーベルなどを持ち上げるのではなく、負荷に耐えながらゆっくりと降ろすような動作を中心にするトレーニング法で、嶋田の場合、数カ月で垂直跳びが8㎝伸び、筋力が約40%も増加したという。

学生時代から指導を続けるナショナルチーム組手コーチを務める亀山歩・国士舘大監督が証言する。「他の選手でも、このトレーニングで効果を出しているが、嶋田は、それを競技に見事に取り入れ、絶対的な得意パターンを作り上げた。その結果、それを中心に試合を組み立てることで、今度は相手がその技を警戒し、他の攻撃も決まるようになっている」

世界の壁を破る「二段階のワンツー」

手に入れた嶋田の得意技が上段突きのワンツーだ。右手、右足を前に構え、まず踏み込んで右手で相手の顔面を突き、すかさず左手で2発目を突く。元々あるスピードに新しいトレーニングで得た下半身の筋力を活かし、一気に距離を縮める動きを習得した。

しかし、それがそのままで通用するほど世界は甘くはない。日本選手よりも手足の長い外国人選手と戦う場合は、間合い、相手との距離の違いを考える必要がある。そこで、踏み込む右足を2段で追い込む練習を重ねた。外国人選手は手の突きよりも、足の蹴りが多い。このため、その警戒は十分にするが、守りに入る気はない。「蹴りを頭に入れながらだが、自分の攻撃に徹する。注意するのは中途半端な距離にならないこと。自分の突きの届く近い距離か、相手の蹴りの届かない遠い距離にいること」を徹底した。

成果が出たのが6月にインドネシアであったアジア選手権だ。前週にも国際大会があるハードスケジュールだったが、嶋田は順調に勝ち上がり、決勝へ。相手は世界選手権3位のカザフスタン選手に対して、イメージ通り先にワンツーで先取。3―0からポイントの奪い合いになったが、一度もリードを許さず、最後は5―4で押し切り、危なげなく初のアジア王者の栄冠をつかんだ。

パワーアップと技の切れを手にした嶋田だが、「心の成長」も見逃せない。以前は「負けたら悔しいという思いだけだった」というが、今は「勝つために、何が足りないのか、を探している」という。「空手は体格差があってもめちゃくちゃ有利でもなく、スピード勝負で勝てたりする。どんなに強い選手でも迷ったり、焦ったりしてポイントを奪われ、負ける原因がある。いつもだったら勝てる相手に負けることも。そこが面白い」

亀山コーチ曰く、「言葉で具体的な質問をしてくる。自分の知識量だけでは足りない問いがどんどん来るので、こちらも勉強しないと追いつかない」となる。