食事に加えて、住まいや看取りのサービスも充実
僕の見立てでは、お金を使う場面が広がっているのです。フードやグッズのような「モノ」に加えて、家族としてのペットに寄り添う「サービス」のほうへ。
たとえば医療です。ペットには公的な医療保険がなく、費用は原則として飼い主が負担します。それでも、CTやMRIのような検査や手術を選ぶことができます。だから、毎月保険料を払って備える民間のペット保険まで広がっています。
住まいもそうです。旭化成ホームズは、ペット「可」ではなくペット「共生」型と呼ぶ賃貸住宅を手がけていて、2026年4月、管理戸数が2万戸に達したと発表しました。猫が室内を立体的に動き回れる「ねこ道」などを備え、入居前には専門のスタッフがペットのしつけの状況や飼い主のマナーを確認する審査まであります。不動産情報サイト「LIFULL HOME'S」を運営するLIFULLの2025年の調査では、ペット可の賃貸物件はサイトに載っている物件の2割に届かない一方で、ペット可物件のほうがサイトに載っている日数は平均で16.6日短かったそうです。
そして、お別れのあとまでサービスは続きます。業務用冷蔵庫メーカーのたつみ工業は、亡くなったペットをお別れの日まで適切な温度で安置できる専用の冷蔵庫「おくりこ pet」を2024年に発表し、ペットの斎場に納めています。写真1枚からペットの姿を立体にするDMMの「ちょこんとフィギュア」(税込2,980円から)は、2026年8月、累計の制作数が1万体を超えたと発表されました。公式サイトは、ニーズのひとつに「虹の橋を渡った子に」を挙げています。お金を使う場面は、冒頭のフード売り場の棚の上だけではないのです。家族の一生に寄り添う産業が、誕生から看取りのあとまで、切れ目なくつながっています。
飼えるかどうかにも、家計の差が出てきた
ここで、少し立ち止まりたい数字があります。ペットフード協会の調査で、回答者を世帯の年収別に分けて犬を飼っている人の割合を見ると、年収1,500万円以上ではおよそ20%なのに対して、300万円未満では6%ほど。3倍以上の差があります。年収だけが理由とは言えませんが、家族として迎え、医療も食事もきちんとしようとするとお金がかかる以上、飼えるかどうかに家計の差が表れやすいのは確かだと思います。
同じ調査で、いま犬を飼っておらず、これから飼いたいと思っている人に理由を聞くと、いちばん多いのは「世話をするのにお金がかかるから」で27%。「別れがつらいから」26%、「集合住宅で禁止されているから」26%とほぼ並びます。「旅行など長期の外出がしづらい」と続いたあとに、「死ぬとかわいそうだから」20%、「最後まで世話をする自信がないから」15%が来ます。飼いたい気持ちはあっても、費用と住まい、そして別れへの不安を抱えています。家族として迎えるからこそ、迎える前に立ち止まる人がいるわけです。ペット市場は、飼える人により深く寄り添って伸びる市場に変わってきています。














