法廷で読み上げられた両親の上申書

父親
「事故前、息子から『友達といっしょに外で宿題をする』と電話で聞いたのが最後の声で、できればもっと親子の対話をしたかった。亡くなったという実感がなく、信じられない。被告人が居眠り運転をしていたのではないかと思うと、悔しくてたまらない。なぜ過失運転致死なのか…。殺人ではないか。自分が犯した罪を十分受け止めてほしい」

母親
「息子はよく泣く子だったが、わがままというわけではなく、一番に家族のことを考える優しい子だった。私が帰宅したとき、いつもなら玄関に置いてあるキックボードがなかったので、夫への連絡のとおり外に行ったのだと思った。すると、自宅に、小学校の教頭先生から電話があり、事故のことが告げられた。車で病院に向かう間に待たされる信号がすごく長く感じた。病院では、ICUの前で待っていると、看護師から『心臓が止まっている。息子さんは頑張っています』医師から『息子さんは頑張っている。会いましょう』と言われ、私は中に通された。ICUの中で息子は、たくさんの管につながれ、頭と手に包帯が巻かれていて、右耳からも血が出ていた。『ママよ、ママ来たよ!起きて!』と叫び、現実が受け入れられなかった。『自発呼吸をしていません』と告げられ、たくさんついていた管が少しずつはずされていく息子の前で、私は胸が苦しくて張り裂けそうだった。その後、目の前で息子は息を引き取った。あとにICUに入った長男は、弟の姿を見て、『なんで?なんでなの?』と叫んだ。この事故がなかったら、息子も中学、高校に行き、結婚もして、幸せな人生を送っていたはず。今でも現実を受け入れられない。正直な気持ちを言えば、息子と同じ目にあってもらいたい。被告には罪を一生背負ってもらいたい」

男は、検察官が上申書を読みあげている間、ぐっと目を閉じ少しうつむいて、微動だにせず聞いていました。

被告人質問では、弁護側と検察側、裁判官が男に質問しました。