生成AIツールを駆使して制作

これらの映像を実際に生成AIを使って制作したのがTBSアクト「ドラマ・映画VFX部」の小嶋一徹さんと大村正俊さんの2人だ。TBSアクトはTBSグループ企業のひとつで、テレビ番組などの技術・美術・CG業務を担っている。

「VIVANT」第2シーズンで、どのシーンに生成AIを使うかどうかは、小嶋さんが判断しているという。

「僕が現場に行って、監督からこのシーンをこうしたいというオーダーがあって、だったら生成AIが使えそうという判断を僕がして、大村さんにやってもらうという流れです。

特に爆発とか炎のシーンでいちからCGソフトを使うと、ものすごい時間とお金がかかります。1カットで数百万円とか。それが生成AIだと大村さん一人で、わずか数日で出来てしまいます」

TBSアクト「ドラマ・映画VFX部」の小嶋一徹さん

では、具体的にどのような手順でこのシーンを制作したのだろうか。担当した大村さんは、意外な事実を明かしてくれた。Google(グーグル)の動画生成AIツールである「Veo3」を利用していると聞いていたが、実は、より精緻な映像を得るために静止画用生成AIの「Nano Banana」も併用しているという。

「『Veo3』で動画を生成しようとしても、自分がいっぱい持ってるサンプルの中から、それっぽいものを作ってくれるだけなので、知らないことはやりません。

あと僕らはVFXの専門家なので『こういう炎にしてくれ』っていう細かいディテールを、炎の燃料がどうだとか、温度がどうだとかをプロンプト(指示文)に混ぜ込んで命令しても、『Veo3』はわからないんですね。

なので、まずこっちの静止画用の『Nano Banana』の方で、細かいディテールをプロンプトに打ち込んで炎の画を作る。それから、『Veo3』に『この炎を見て、これを動かしてくれ』ってやるんです。『Veo3』は動かすのは得意なので」

“生成AIガチャ”

ただ、生成AIツールならではの苦労があるという。

「こっから先は“ガチャ”になります。出てくる動画が毎回変わってしまうんです」

生成AIを用いた画像や動画の制作現場で言われ始めている“生成AIガチャ”。生成AIは、同じ指示でも毎回異なる結果を出す仕組みになっているのだ。そのため大村さんは、満足できる動画が出てくるまで試行錯誤を繰り返すという。

このように、生成AI単体では細かな調整が難しいため、最終的に目的に合った映像へ仕上げるには「やはりVFXやCGの確かな知見や技術が不可欠」と大村さんは強調する。

TBSアクト「ドラマ・映画VFX部」の大村正俊さん