消費減税は財政ポピュリズム

高市政権の政策で、さらにあらわになったのがポピュリズム体質である。

高市総理が2月の施政方針演説で強調したのが「責任ある積極財政」だった。「長年続いてきた過度な緊縮指向を断ち切る」とも言明した。

この予算案は総額122兆円。1年前に当時の石破茂政権が提出した予算案は115兆円だったから、7兆円増えただけだ。新規国債の発行も前年と同程度の約30兆円。前年度までの予算が「緊縮指向」だったわけではないし、その流れを「断ち切る」とも言えないのが実態だろう。予算案の総額は「微増」なのに「積極財政」と言い切り、「人気取り」の材料とした。

高市総理は、予算案に続いて財政ポピュリズムを発揮していく。食料品の消費税率を8%から0%に引き下げることを「政治家としての悲願」と訴えた。

自民党の税制調査会は長年、税制改革の主舞台となってきたが、同調査会関係者は「高市氏が消費税率引き下げについて発言したのを聞いたことがない」と証言する。高市氏の「悲願」は、26年の衆院選で多くの野党が消費税率の引き下げを主張し、高市自民党がそれに対抗するために公約として「食料品税率の2年間ゼロ」を打ち出した「にわか作りだ」とも語っている。

消費減税をめぐっては、自民、維新の与党に加え、多くの野党も加わった国民会議で議論が進められた。レジシステムの都合から、現行の食料品8%を0%に引き下げるのは時間がかかることから、1%への引き下げで調整が続いた。

これには、野党だけでなく自民党内からも批判が出ている。

(1)高市総理は、減税は2年限定と明言。2026年秋の臨時国会で1%に引き下げるための関連法案が可決され、27年4月から実施されても、29年3月末に8%に戻すことは可能か(2)1%への引き下げのためには4兆円の財源が必要だが、確保できるのか(3)減税で景気が刺激されれば、インフレが加速されるのではないか――などの理由が挙げられている。

だが、高市総理は当初方針に沿う形で1%への減税を押し切る構えだ。減税ポピュリズムである。

物価高対策としてガソリンへの補助金を出し続けているのも、典型的な財政ポピュリズムと言える。ガソリン1リットルを170円程度に抑えるため、30円~40円ほどの補助金が支給され、毎月3000億円を超える財政負担となっている。ガソリン価格が高騰すれば、マイカー通勤を控えたり、EV(電気自動車)への転換が進んだりするというマーケットメカニズムが働くはずだが、この補助金が市場原理を阻んでいる。

だが、財政支出の拡大には大きな副作用が伴う。

高市総理は減税とともに、2040年度までにAI(人工知能)や半導体、造船などの重点分野に官民合わせて370兆円を投資する方針を打ち出した。ただ、具体的な財源のメドは立っておらず、財政赤字が膨らむのではないかという懸念から市場では円安が進み、長期金利が上昇した。

円安は輸入物価の上昇を招き、さらなるインフレにつながる。長期金利の上昇は、住宅ローンの金利上昇という形で国民に負担を強いる。そして国の借金に対する利払い増を招き、財政悪化に直結する。財政ポピュリズムには重い代償を支払うことになる。