異例のタイムトライアルと、掴み取った完全復活

それでも、失った自信を取り戻すのは容易ではない。惨敗から2週間後、横田ヘッドコーチはある決断を下す。それは、本来レース前には行わない、記録を狙うタイムトライアルだった。タイムが悪ければ、不安を絶望へと変えかねない、コーチにとっても大きな賭けだった。

「本人と話をして、タイムトライアルをしたんです。人生で、自分も選手にもやらせたことない。気持ちの問題だと思ったので…僕が引っ張って、そのなかで『これくらいは絶対出せるというタイムを出したらいいんじゃない』と言った」横田ヘッドコーチは意図をこう語る。

コーチも共に走り、ペースを作る。そこで久保が出したタイムは、木南記念の日本選手最速を上回る2分3秒だった。

不安が完全に消えたわけではない。それでも、あの惨敗からおよそ1か月が経った5月30日。海外の選手も参戦するMDCグランプリで、久保は再びスタートラインに立った。

1周目、久保は自身の持つ日本記録ペースで通過。残り200メートルでトップを明け渡すも、最後の直線で再び逆転し、見事、復活優勝を果たした。

そして迎えた、6月13日の日本選手権。ゴール前の接戦を制し、3連覇を達成。9月の名古屋・愛知アジア大会への切符を掴み取った。

「初戦からうまくいかなくて、心が折れそうになったんですけど。何とか立て直せたこと、今はすごくよかったと思っています。もっとレベルアップして、間違いないなと、安心して見ていただける力をつけて(アジア大会に)帰ってこられたら」

どん底を知り、さらなる強さを手にした18歳。9月のアジア大会で、どんな走りを見せてくれるのだろうか。

(TBSテレビ「バース・デイ」2026年6月20日放送より)