②捜索差押え(1回目)から逮捕方針の決定

捜索差押えと同時に、被疑者や関係者への事情聴取が一斉に行われました。供述調書も順次作成されていきました。応援検事が作成した供述調書は主任検事の下に集約され、特捜部の部長、副部長もその内容は把握していました。
11月4日、主任検事は副部長に対し、「プレサンスのA氏(山岸さんの元部下)の取調べが重要と考えています」とのメールを送りました。
この時点で、特捜部のなかで、もともとの被疑者4名に加えて、A氏も重要人物として認識されるようになったのです。
ここで業務上横領事件の捜査態勢を確認しておきます。
大阪地検特捜部が取り扱う身体拘束事件の多くは、大阪高等検察庁検事長指揮事件となります。高検を経由して、最高検察庁にも報告が上がります。そのため、大阪高検にも最高検にも特捜係検事が配置されています。明浄学院業務上横領事件では、大阪高検の検事、最高検の検事がそれぞれ特捜係検事でした。
11月27日、副部長と高検の検事は、最高検からの問い合わせに備えて準備を始めました。山岸さんの処分をどうするのか問い合わせが来た場合、どう回答するのかも検討がされました。検討の結果、次のような回答が準備されました。
「犯罪遂行に重要な役割を果たしている事実関係(18億円を自ら出捐し、その返済要求を厳しく行い、実際に回収等)は認められ、山岸に本件スキームを直接説明するなどしていたA氏らから山岸関与の供述が具体的に得られ、関係証拠と併せて総合考慮し、山岸が、その貸付金18億円の債務は、学校法人でなく元理事長に帰属する個人債務であると認識し、その返済を学校法人の財産によって行わせる旨認識しながら、実際に学校法人の土地売買を進め、同法人の財産から回収を遂げたものと評価できる場合、否認である点も踏まえ、逮捕すべき」
11月28日、主任検事は、元理事長ら4名に、新たに3名の被疑者を加えた7名のうち5名を逮捕する方針が記載された着手報告を作成しました。
新たな被疑者のなかに、田渕検事が取り調べを担当するA氏が含まれていました。着手報告では、山岸さんの共犯性については、A氏らから、山岸さんの認識についての供述を得られていないこと、ほかに山岸さんが犯罪を認識していたことを基礎付ける直接的な証拠も発見されていないことを理由に、山岸さんの逮捕は「現時点で消極と解さざるを得ない」とされました。
12月3日から4日にかけて、最高検特捜係の検事は、大阪高検の検事に対して、A氏らの供述調書だけでなく、山岸さんの供述調書の送付を求めました。加えて、A氏らの関与状況をまとめたメモも送付されました。
最高検からの質問とそれに対する回答は、田渕検事を含む応援検事にも共有されました。














