「私たちって本当にコロナと一緒に活動してきたんだなって」 

自分たちの歩んだ道のりについて振り返るのは5人組のハーモニック・メタルバンド、HAGANEのリーダー・Sakuraさん(ギター)。こう語るのには理由がある。2018年結成のHAGANEは、メンバー脱退による活動休止期間などがあり、2019年11月に現在の体制で活動を開始した。ちょうどそのころ、中国・武漢では新型コロナウイルスによる肺炎患者が見つかっていた。バンドとコロナの“並走”が始まった。

■運命の3月26日 ~喧嘩状態の激論の末、5人で出した結論は~

(左から)Uyuさん Sakuraさん Mayto.さん Sayakaさん Kanakoさん

2020年3月26日。5人は夜遅くまでLINEで話し合いを重ねていた。
バンドは、”プロへの第一歩”であり、晴れの舞台である初のワンマンライブを翌日に控えていた。

しかし、この前日に東京都の小池知事が「感染爆発の重大局面」だとして”週末の不要不急の外出自粛”を要請したことで、事態は急変する。SNS上でも「親戚がコロナにかかって大変な状況なのに、本当にやるの?」など、ライブ開催に否定的な声がメンバーに届いていたという。

一方で、何もしないのであれば会場のキャンセル料がかかってしまう。5人はワンマンライブを決行するのか、決断を迫られた。

Uyuさん(ヴォーカル)

Uyuさん(ヴォーカル)
「とりあえずみんな混乱している状況でしたね。なんか決行と中止で3人、2人くらいに分かれていて」

Sayakaさん(ベース)
Sayakaさん(ベース)
「遠征してくださるファンの方とかもいらっしゃるじゃないですか。前日の夜に、延期、中止っていうのは言えないなってすごく思いました」

Kanakoさん(ドラムス)

Kanakoさん(ドラムス)
「自分はプレーヤーなので、有観客で感染対策をしっかりしてやりたいなって思ったんですけど、一番大事なのはファンの皆さんの体調というか健康なので、悔しいですけど、ここはやっぱり無観客でいくべきなのかなって」

彼女たちは特定のレーベルと契約しておらず、物販やSNS展開、CD制作に至るまですべての業務を自分たちでこなしている。
このときも、ワンマンライブの開催について導いてくれたり、決定してくれる人はいなかった。最後は5人で決めるしかなかったのだ。

喧嘩状態の激論の末に出した結論は、無観客での配信ライブに切り替えることだった。それでもメンバーの胸中は複雑だったという。

Mayto.さん(ギター)

Mayto.さん(ギター)
「当日はもうすごくピリピリしてたのが正直なところで、無観客で配信で決めたは良いものの、やっぱり気持ちも持っていけないメンバーもいますし、私自身も持っていけない部分はあったんですね」

Uyuさん(ヴォーカル)
「無観客やってて思ったのは、やっぱりファンのみんながいたから、熱くなれるんだなと。みんなの前で声を出したいって歌っている最中に思ってしまいました」

Sakuraさん(ギター)
リーダーのSakuraさんはライブ後、ツイッターに「本当に27日、たくさんの意見があの日あって、もちろん対策もいっぱいしていたけど、開催しなくてよかった。おそらく今頃私の心が死んでいました」と呟いた。

Sakuraさん(ギター)
「あのときの自分たちをちょっと褒めてあげたいです。悲しい気持ちだったと思うんですけど、それでもあのとき頑張った自分たちを褒めてあげたいです。もしバンドがワンマンライブをやって、感染者を出してしまっていたら、悪い意味でバンドを有名にさせてしまうっていうのが一番自分にとって嫌で。だからお客さんには申し訳ないですけど、やっぱり今後のことを考えるならば、やっぱりやんない方がいいなって」

その後、HAGANEはワンマンライブを2回開催したものの、現在に至るまで「観客が声を出せる形」では実現できていない。

Sayakaさん(ベース)
「私達ってこの5人の現体制になって、声出しでできたライブって、本当3、4回とかなんですよね。ライブハウスでのお客さんとのコールアンドレスポンスがあるライブって、今どんなんなんだろうって、ちょっとあんまり想像がつかない」

観客の歓声が聞こえないライブ、それはコロナがバンドに与えた“呪縛”かもしれない。