■日米が「敵基地攻撃能力」で協力深化 防衛増税どうなる?
ーー安全保障のプロの石破さんに聞いておきたいのは、日米関係。日米両政府は2プラス2で日本の「敵基地攻撃能力」の効果的運用に向け協力を深化させることを決めました。大歓迎で迎えられているわけですけれども。

石破元幹事長:
それは大歓迎するでしょうね。それはアメリカの国力が相対的には落ちていると。あくまで相対的だけども、中国はすごく強化してますからね。やはり、このアジア太平洋地域において、バランスオブパワー、力の均衡が保たれていくためには、アメリカの力が相対的に弱くなるその隙間を日本が埋めてくれる、なおかつアメリカ製の武器をいっぱい買ってくれると、それはいいことだと。
「瓶の蓋」論って、ジョセフ・ナイさんが言ってたけれども、当初、日米同盟ってのは日本が軍事大国化しないように、侵略国家にならないようにって意味合いがあったし、アメリカは同盟によって、日本の領土・領空・領海、いくらでも使えるよ、いつまでも使えるよ、どのようにでも使えるよってのが日米同盟だった。けれども、もうそんなこと言ってられないと。日本がそういう力を持ち、アメリカ製の武器を買い、この地域においてバランスのパワーが保たれると。ウェルカム、ということになるんでしょう。
ーー通常国会で議論の焦点になりそうなのは防衛増税です。財源に関しても、所得税に手を入れて、復興税の期間を延長して比率を下げて、そこで防衛増税を盛り込ませると。この形はどう思いますか。
石破元幹事長:
やっぱり担税力というか応能負担というか、誰が負担する能力を持ってるんですかっていうと、大企業は史上空前の利益を上げてるわけでしょう。どことは言わないけれど、いろんな税法の手段を使って、誰でも知ってる大きな企業が法人税を全然納めてないとかいうこともある。だから、負担する能力を持ってるのは法人なんだろうということになるわけですが、それだけでは十分じゃない、広くあまねく国民からいただくとすれば、消費税でもないよねと。逆進性がありますからね。そうすると、復興税の期間を延長するってやり方は、かなり苦心の作だと思っているんですよ。私が税調で言ったのは、「とにかく復興にいささかの遅れも生じさせてはならない」ということですよね。そして、国民の負担はできるだけ少なくなければならない。何のために、っていうことをきちんとご理解いただかなきゃいけないということでした。やっぱり国民負担を最小にする努力はしていかなければいけないです、今後もね。
■“反撃能力の柱”トマホークは「ないよりマシ」
ーーまた、反撃能力の柱の長距離ミサイル「トマホーク」について。2027年までに500発買うと報道されていますけど、これは中国に対して抑止力になるんですか。
石破元幹事長:
あんまりならんでしょうな。「ないよりマシ」ってものなんですよ。それは大事なことでね、これさえあればって言うんだったら、核兵器っていう選択もあるんでしょう。だけどそれは、日本は唯一の被爆国でもありなかなかハードルは高いだろうということになっていくわけですよね。そうすると「ないよりマシ」みたいなもの……トマホークって一体何なのよっていう話をどこまできちんとしましたかね。ジェットエンジンで飛ぶわけでしょ。基本的にジェット機だからね。時速850キロしか出ない。それで、中国のどこに基地があるか知らないが、そこまでゆっくり飛ぶと。それは飛んでる間に落とされる危険性だって相当にある。トマホークって聞いただけで、なんかすごい能力を持つというような、そういう議論はかなり危ない。だけど「ないよりマシ」であることは違いないが、それがどんな抑止力になりますか。相手が中国とは言わんですよ、どの国でもいいですよ。「ほう、日本がトマホーク持った、攻撃するのをちょっと控えようかな」って思ってもらわないと抑止力にもならない。日本は音速の何倍で飛ぶようなミサイルは開発できてないわけですよ。弾道ミサイルも持ってない。そうすると、じゃあどうするのって話になっていくわけですよ。だから「ないよりマシでしょ、だからトマホーク」っていう開き直った議論をするつもりは、私はないんです。1発3億円で何百発、それだけでもすごい金ですよね。ならば、そのお金、他に使い道ないですかと。じゃあ潜水艦が22隻だ、でもこれを1隻の船に2組の乗員ってことであれば、稼働率で飛躍的に上がるわけでしょ。じゃあ、そういう方にお金を回すってこと考えられませんかとか、かなり私もまだまだ足りないんだけど、防衛の知識がないとできないんですよ。
ーー敵基地攻撃能力について。国内の説明では、敵の攻撃を思いとどまらせる抑止力だという話だったんですけど、今回アメリカとの話の中では「協力深化」という形で、実際にやる前提になりましたね。
石破元幹事長:
これはね、本当に私が信頼してやまない浜田さんが大臣やってるんで、それは防衛省の中でちゃんと詰めてやってることだと思いますよ。それを前提にして言えばね、実際に日本が敵基地攻撃能力を持ったとして、アメリカがやめとけって言うのに勝手にやっていいはずがないんだよね。そのときに「誰が司令官になるんだ、アメリカなのか?」って、避けて通りたいのかもしれないけど、やっぱりそういう話を詰めていかないと、日米同盟がうまくワークしないんじゃないですかね。
■台湾有事・中国が台湾を攻撃する可能性「何のメリットがあるんだって話」
ーー国民の不安の背景はまずウクライナ侵攻ですよね。そしたら、中国が台湾に武力行使した場合、アメリカと中国の戦争になって、在日米軍基地を攻撃されるという。だから、世論調査では軍備を増強すべきという意見が多くなっている。中国が台湾を攻撃する可能性については。
石破元幹事長:
何のメリットがあるんだって話でしょ。中国の中で本当に経済が伸びない、格差が広がる、医療が行き届かない、人口がやたらめったら減ると。共産党一党独裁の体制が揺らいだときに、耳目を外へ向けるってことは可能性としてはなくはない。でも、そうならないように何ができますかって議論もしていかなきゃいかんですよね。格差が広がることも、人口が急減していくことも、医療体制が行き届かないことも、日本と中国で協力できることはいっぱいあるじゃないですか。その中国のことを「いやいやもう大変だ、いつ台湾攻めるかわからんぞ」みたいなお話を一方的にするつもりは、政府にはないんだろうと私は思ってるけれど、今のところそんな感じを持ってる人が多い。これから先の努力は問われるところですね。