「“努力が報われる”という言葉は、少し違う」

“深部の自分”との対話は、やがて“努力”という言葉の意味そのものを静かに問い直す作業へとつながっていく。

「僕は、『“努力が報われる”という言葉は、少し違う』と思う」

「『報われるまで徹底的に正しい努力をし続けるから、結果として報われる』だけであって、もがいている途中の段階では、全然報われない。自分の目には見えない。ただ、見えない中で、報われるための『形』には、少しずつ裏でなっているのかもしれない。ただ、その積み重ねも、自分の『仕組み』と『考え方』と『体の動かし方』の3つがコート上で完璧にフィットしない限り、それはただの『間違った努力』になる」

『努力』が結果として現れるのは、いつもほんの一瞬かもしれない。
その一瞬のために、人はどれだけの時間を積み重ねるのか。

その考え方は、代表を離れた1年間の過ごし方にも表れている。

「代表を休止した1年間、『もし1日でもサボっていたら、多分今の自分はこうはなっていない』。その『1回のサボり』で、積み上げてきたものなんて簡単に自らの手で崩れる。それまで毎日積み上げてきたものを、自分で一瞬にして崩すことになる。だから、いかに毎日を『丁寧に過ごすか』と思っていた。常に僕が口を酸っぱくして言っている『準備』とは、そういうこと。僕は、コート上での『その一瞬の輝きのための準備』を、裏で何百日もしている。それをただ、当たり前にやり続けているだけ」

ネーションズリーグ スロベニア戦

勝負を分けるその一瞬のために、すべてを『準備』に捧げてきた。
そして、自分を深く知った先に、西田の視線はチームへと向かい始めていた。

「セッターとのクイックやバックアタックの『コンビの精度』は、世界と戦う上で、絶対に必要な部分。コンビの精度の課題が自分の頭の中でパッとクリアになりさえすればいい。あとはティリ監督の言う『フロアディフェンス(レシーブ)』に関しては、日本のディフェンス力なら絶対に素晴らしい状態になる。そこにフロントのブロックの締め方・開け方の関係値や戦術の部分が絡んでくる。

コートの上でバレーを『複雑に考えなくても』、言葉にしてしまえばやるべきことはすごくシンプル。それを実際の激しいラリーの中で体現してやることが、もの凄く難しい。当たり前に自分たち選手もコートの中で今、激しく感じている部分だけど、『シンプルな問題提起(課題の明確化)』を、練習の前の段階で頭の中で押さえておけば、1つのローテーションずつ、コートの中で確実に課題はクリアにできてくる。

物事はシンプルに考えている時の方が、頭としては楽。日々の練習をする分にも、試合の中で何かとっさの行動をする分にも、『シンプルに考えて』おいて、シンプルな軸の中に、人間の肉体の複雑な動きの関係性(連動)だったり、勝負どころのアグレッシブな行動が、後から自然と伴ってくるだけなんです」