ネットの経済情報が隆盛の時代に
ネットの世界では、今や経済ニュースは、「引っ張りだこ」と言っていい、人気のコンテンツでしょう。元来、経済ニュースは、視聴者のリテラシー、いわば予備知識の差が大きく、対象の広いテレビよりもネットに、より親和性があるように思います。
また、興味や利害関係のあるテーマを、自ら選択して情報収集を進めていける点も、ネットは優れているかもしれません。興味と意欲と、理解力のある人ほど、ネットで情報武装することができる時代です。
しかし、「世の中」の関心が益々「経済」に向いている時代に、テレビが経済ニュースで果たせる役割は、依然、大きいと、私は感じています。
一定の時間で網羅的に経済のニュースがわかること、放送局の取材網を使って、分厚い取材成果が、しかも多角的に見られること、広く評価されている専門家の知見に触れることなど、テレビの長所は数多く存在します。テレビ報道を入り口に、視聴者が経済に関心を持ち、積極的にネットで経済情報をハントするようになる、そんな補完関係もあるように思います。
また、テレビ局が取材したコンテンツは、比較的、信頼性の高いものとして、ネット上でも好んで視聴されています。「Bizスクエア」は、番組をコーナーごとにネット配信していましたが、2024年度には、1年で2000万を超える視聴回数を記録しました。
小さな事実を「文脈」で伝えるテレビの経済ニュース
こうして見てみると、テレビの経済ニュースが特別な進化を遂げたわけではなく、他の分野と同様に、「速報性」や「映像」へのこだわりから、次第に、「深掘り」や「背景」「関連」の「解説」へと、その領域を時代とともに拡げていったことがわかります。
とりわけ「速報性」や「情報量」では、ネットとの差が明らかな以上、テレビの経済ニュースには、それを上回るだけの、「ニュース性」の抽出作業こそが命になるでしょう。
ひとつひとつが小さなニュースであることが多い、経済ニュースだからこそ、いつ、何をもって、どのように、ニュースとして報じるのか、というセンスが、益々問われているのです。それは、点と点の出来事を、どのような「文脈」で編み、伝えるのかという、ジャーナリズム本来の、変わらぬ作業でもあります。
今も、これからも、大きなポテンシャルがある経済ニュースが、顧客をネットに譲るのではなく、地上波、BSを問わず、テレビ放送の中で、新たな形で挑戦を続けていくことを期待してやみません。
<執筆者略歴>
播摩 卓士(はりま・たくし)
ジャーナリスト・帝京大学経済学部教授
1960年大阪府生まれ。
1984年東京放送(現TBSテレビ)に入社。報道局で経済全般を担当、ワシントン特派員として日米経済摩擦を最前線で取材。経済部長を経て、ワシントン支局長時代の2008年にはブッシュ大統領単独インタビューも。NEWS23キャスター、編集主幹、解説室長などを歴任。
2026年3月まで、BS-TBSの経済ニュース『Bizスクエア』のメインキャスター。
「TBS NEWS DIG」にて「播摩卓士の経済コラム」を連載。
【調査情報デジタル】
1958年創刊のTBSの情報誌「調査情報」を引き継いだデジタル版のWebマガジン(TBSメディア総研発行)。テレビ、メディア等に関する多彩な論考と情報を掲載。原則、毎週土曜日午前中に2本程度の記事を公開・配信している。














