「一時的に“格差を作り出す”ことが大事」


(林)「日本の格差拡大についてのご意見を伺いたいんですけれども」
(成田)「誤解を恐れず言うと、あんまり格差とか気にしない方がいいんじゃないか...というよりむしろ、どうやったら格差を作り出せるかという問題を考えたほうがいいんじゃないかなって思うんです」

(林)「そもそも、格差は拡大しているとお考えですか?」
(成田)「アメリカやイギリスといった国に比べると、実は日本の格差の広がり方ってすごく緩やかです。格差が広がる局面って、たとえば新しいビジネスや産業が作り出された時に、それによって生み出された富を一部の人々に分配する、結果として格差が広がる、これがよくあるパターンです。一方、日本はここ数十年間で大きな産業、新しい富をほとんど生み出せなかった。なので、格差を生み出すっていうことがすごく難しいんですよ。お金持ちも貧乏人も同じように貧乏になっていて、ある種の“一億層貧困社会”みたいなものが生まれてしまっているんです」

(林)「一億総貧困社会」
(成田)「はい。だから弱者と呼ばれるような人たちを救うためにこそ、稼ぎまくって納税しまくる人を作り出し、一時的に格差を作り出して“富を蓄積できる人”を増やすことが大事なんではないかな。中途半端に弱者を助けようとして格差を強調しすぎると、それによって社会全体が貧しくなって、勝ち組も負け組もみんな傷つくみたいな予期せぬことが起きてしまう可能性に注意しなくてはいけないんです」

凝り固まった価値観をキャンセルする方法とは?

対談の中で成田氏が訴えたのは、“気づかないうちに刷り込まれた既存の価値観から、いかに自由になるか”という一点。林との対談も、そこにフォーカスする方向に進んだ。

(成田)「やっぱり、僕たちの中にすごく間違った向上心みたいなものがあるんじゃないかと思っていて。仕事や肩書を手に入れた時に、それを離すまいという強い心が僕たちの心の中にあると思うんです。考えたいのは、そこからどう自由になるか。そうでなければ、その後も同じことがずっと形を変えて人生を通じて繰り返されていくと思うんですよ」

(林)「特に進学校はそれが顕著に出る集団ですよね」
(成田)「そうですね。そこから自由になるために、自分がいる業界と全然違う世界とかかわってみるとか、全然違う世代の人と突然かかわってみる経験が大事だと思うんですよね。そういう経験をすればするほど、凝り固まった価値観を少しキャンセルできるというか」

 (林)「キャンセルできなくてずっと縛り付けられたまま動くことができない状態になっている人がたくさんいるっていうのは、わかる気がします」
(成田)「子どもの頃から、そういうアウェイの環境に飛び込んでいく経験を人生にどう埋め込んでいくかが大事になっていくんじゃないかと思いますね」