30代半ばという若さで名門・イェール大学助教授を務める“世界が認めた天才”成田悠輔氏。東京大学経済学部を卒業し、マサチューセッツ工科大学で博士号を取得。現在はデータ分析を駆使し世界最先端の研究を行う経済学者だ。そんな成田氏が、現役予備校講師の林修先生を聞き手に“格差”と“教育”について激論を交わしたインタビューが4月17日の「日曜日の初耳学」で放送された。「一時的に格差を作り出すことが大事」と訴える成田氏、その目に見えている景色とはどんなものか。そして成田氏が考える現代の大学入試の問題点とは。

「いい学校に行くこと」が自己目的化された社会

(林)「経歴を拝見すると、大内兵衛賞(東京大学経済学部の最優秀卒業論文に数年に一度授与される賞)を受賞されているんですね。僕の先輩のすごく優秀な人もたしか受賞しているんです」
(成田)「僕、あんまり賞はどうでもいいかなっていうタイプの人間なんです。人から嫌われるとか興味持たれないぐらいの方が"自分は新しいことをやっている"っていう気がするので。人から理解されたりほめられるような"普通のこと"をやってちゃいけないってちょっと思います」

(林)「今はどんなことを研究されているんですか?」
(成田)「教育の分野で言うと、“努力して優秀な学校に行こうとする”ことに本当に意味があるのかなっていう受験生の疑問に答えるような研究をやっています。たとえば有名な中高一貫の進学校や大学に進学したら、本当にその人たちの未来にいいことが起きるのか。実際のデータや事実としてどうかを自治体や政府、企業の持っているデータを基に調べます。実はアメリカのエリート校といわれる学校については、どうやらほとんど意味がない場合が多い、という結果が出てきたんです」

(林)「僕自身も(予備校で)ギリギリ東大に落ちて早稲田大学に合格した子には『浪人は勧めない。(どちらの大学に進むかによって)多分人生に差は出ない』って話したりするんですよ。高校までで得た情報の中で『行きたい』と思っていた大学も、入ってみたら思っていたのと違っていた、なんていうことはいくらでも起きるので」
(成田)「たしかに“優秀とされている学校に入ること”が自己目的化されている感はありますよね。どこかで1年余計に時間を使うんだったら、(浪人するよりも)どういうことを学びたいのかがわかったタイミングで1年そのことを新たに勉強するために使う方が有効な気はしますね」