「いつ自分がその立場になるか分からない」―導入企業が示す姿勢
こうした現状に対し、すでに制度を導入している企業もある。いずれも「多くの従業員が利用することは想定していないが、だからこそ導入しやすい」という共通した認識のもとで動いている。
厚生労働省の「働き方・休み方改善ポータルサイト」(https://work-holiday.mhlw.go.jp/)では、大手コンサルティング企業と地方企業の2社の事例が動画で紹介されている。
■デロイト トーマツの事例(犯罪被害回復休暇)
大手コンサルティング企業のデロイト トーマツは、2016年に制度を導入。「多くの方の利用が想定されなくても、率先して制度を作れば、いざという時に従業員を守る姿勢を示せ、従業員に安心感を持って働いてもらえる」との考えからスタートした。
本人または家族が被害に遭った場合、年間10日(同一事由につき最大3回(最大30日))の無給休暇が取得可能だ。
対象犯罪を厳密に規定せず柔軟に対応するほか、近年はDV(ドメスティック・バイオレンス)被害支援も対象に加え、専門機関と連携して会社が個人の相談内容を把握しない厳格なプライバシー保護体制を敷いている。
■株式会社オガワエコノスの事例(災害・犯罪被害支援制度休暇)
オガワエコノス(本社・広島県)は、廃棄物処理やリサイクルなどを展開する企業。西日本豪雨を機に導入した災害用の休暇制度に、犯罪被害も追加する形で整備した。
最大の特徴は「柔軟性」。「取得要件を明確にしすぎると使えない制度になる」とし、取得事由や有給での付与日数(原則必要日数)を個別ケースごとに判断する。
情報共有も所属長や人事など最小限に留め、証明書類の提出要件も実態に応じて免除するなど、被害者側の立場に立った素早い初動を優先している。
同社の担当者は、被害にあった社員への支援についてこう語る。「一番心配しているのが家族のこと、おそらくそれだけでもういっぱいのはず。次に心配になるのが仕事のこと。お客様との約束、仲間や会社に迷惑をかける心苦しさ。仕事の心配をみんなで支援することが本当の優しさだと思います」
実際に制度を利用した社員からは「仕事の心配をしなくていいように対応してもらったおかげで仕事を続けることができた」との声が寄せられているという。














