「終のひと」がぶつけてきたもの
田幸 「終のひと」(TBS)がよかったです。知っているようで知らない死の実務を容赦なくぶつけてくる作品で、いいと思いました。
身近な人の死の準備はなかなかできなくて、いざとなると心が追いつかないうちに、知らないうちにスピーディーに物事が進んでいってしまう。それを30分の体感で描いているのが、まさに葬儀とは、人を送るとはこういうことなんだと感じました。
葬儀社でバディになる二人のスタンスが、遺族の気持ちに寄り過ぎてしまう新人と、仕事はきっちりやるけれど破天荒で寄り添わない、一見クールな元刑事で対照的です。
元刑事は自身が余命半年の宣告を受けていて、平気な顔をしていますが、死がすごく怖い。あんなに人をたくさん送ってきた人でも、いろんな準備、経験をしても、やっぱり死って怖いんだとしっかり描いている。バディとしての師弟関係と、成長物語、死の実務の容赦なさとか、いろんなものを30分の中でみっちり描いていて、完成度の高い作品です。
倉田 私で言うと、将来両親が亡くなるということもあろうかと思いますが、そのときに、どうしたらいいのか、どういう気持ちになるのか、このドラマを見て、そういう不安が少し減ったように感じます。身近な人が亡くなった時に、その死とどうやって向き合うかを教えてくれる作品でした。
あの志田未来が…「未来のムスコ」
倉田 「未来のムスコ」(TBS)。志田未来さん演じる主人公、売れない劇団の俳優です。その彼女のもとにある日突然、彼女をママと呼ぶ見ず知らずの男の子が現われて、10年後の未来からきた彼女の息子だと言いはるんです。もう完全にファンタジーの世界で「どういうこと?」という感じで見始めたんです。
彼女も当然そんなこと信じられませんし、産んだこともない子どもの面倒なんてどうやって見ればいいんだとパニックになります。
ここで「警察に通報したら」といった野暮なSNSもあったのですが、そこはドラマなのでそうはならないだろうと思いつつ、彼女の戸惑いにも共感できましたし、その子が本当に未来から来た自分の息子だと信じていく過程を一緒にたどれたので、ファンタジーの世界だけれど、すんなり入り込めて、その段階的な描き方がよかったなと感じました。
主人公は結婚もしておらず、劇団員として稼がなきゃいけなくて忙しいし、子育てももちろんしたことがない。それでどんどん周囲を巻き込んでいくんです。そのことで、劇団をそろそろやめなさいと言っている故郷の親との関係性が変わっていったり、親友が手助けをしてくれたり、劇団の仲間や幼なじみの保育園の先生とか、いろんな人を巻き込みながら、みんなで一人の男の子を幸せにしていく過程が描かれていて、心が温かくなりました。
現代は子育てで孤立している母親の叫びがSNSにあふれていたり、育児ノイローゼの結果、虐待のような悲しい事件があったりしますが、子どもは一人で育てるんじゃない、みんなで育てるんだという世界観がもっと当たり前になったらいいなと思いました。
その子が未来から来た理由は、ママと「まーくん」と呼ばれているパパを仲直りさせたいということのようなんです。でもその「まーくん」が誰か、主人公にはわからなくて「誰がまーくんなの?」という展開も、すごく気になって引き込まれました。
田幸 ファンタジーですが、心理をうまく描いていて、あとやっぱり志田さんはとても上手ですね。ちゃんと共感できるように丁寧に丁寧に演じていました。彼女の演技力あってのところがかなりあるなと思って見ていました。
影山 「14才の母」(日テレ・2006)の志田未来が「未来のムスコ」をやる。そういうドラマ的な歴史をひもとくというか、志田さんの俳優としての成長ぶりを再確認できる、そういうおもしろさもありました。
それから、「バック・トゥ・ザ・フューチャー」ファンとして言いますが、タイムスリップで登場するのが電子レンジと稲妻なんです。ああ、と思いましたね。
さらに、ネタバレになってはいけませんが、まーくんは誰かというのがメインかと思いきや、もう一ひねり二ひねりしている。これは原作のうまさですが、それをちゃんとドラマに反映していて、僕も好きなドラマでした。














