2026年1月期のドラマについて、メディア論を専門とする同志社女子大学・影山貴彦教授、ドラマに強いフリーライターの田幸和歌子氏、毎日新聞学芸部の倉田陶子芸能担当デスクの3名が熱く語る。はたしてこれはドラマなのか?と思わせる奇妙な作品も登場。
「考察」なんかさせない「探偵さん、リュック開いてますよ」
影山 僕のイチオシは「探偵さん、リュック開いてますよ」(テレ朝)です。
あらすじをかいつまんで言うと、主人公の松田龍平さんは才能ある発明家で、アメリカでいいところまで行ったんですけれど、今は廃業した温泉旅館に住んでいる。
お父さんは行方不明でお母さんは原田美枝子さんです。お母さんはお父さんを探しているらしく、海外を飛び回っていて、時々明るい能天気な絵葉書が届く。一度だけ登場しますが、基本的には声だけの原田さんがはまり役です。「リブート」(TBS)のシリアスな原田さんもいいですが、こういう原田さんもいいですね。
主人公は探偵もしていて、そこに癖のある依頼者がやって来る。温泉街にも癖のある人々がいる。無愛想なよろず屋の女の子がいたり。やがてその廃業した旅館に住みついてしまう人がだんだん増えていったりするわけです。
主人公が発明した乗り物が出てくるんですが、その乗り物のエネルギー源は“負の感情”なんです。だからその乗り物に向かって悪口を言うと、それがエネルギーになってどんどん走る。第1話でその乗り物に乗って、のどかな温泉街を主人公が颯爽と走るシーンがあって、これがドラマのコンセプトだと思いました。
今は一部の考察系とか、入れなくてもいいような要素をうだうだ入れるドラマが多い中、そんな考察とかさせへんでみたいな。もう潔くこの楽しさと緩い感じを味わって下さいという姿勢が好きでしたね。
最初の方は、行方不明の父親について語るところもあったので、松田優作に対するオマージュかな、とも思ったんです。松田優作の代表作に「探偵物語」がありますし。でも最終回まで見ると、本当にばかばかしい終わり方なんですよ(笑)。だから、松田優作オマージュですよと真顔で語るのも違うかなと思ったり。
今の令和のドラマ群たちよ、こういうドラマがあるぞというのを「どうや」と見せつけた作品で、圧倒的にこれがイチオシです。
倉田 大好きでした。多分、この期の私は疲れていたんだと思うんです。ほのぼの系のドラマが恋しくて恋しくてという状態で、そこにはまったんです。松田さんが発明家でありながら探偵という変わったキャラクターを自然に演じていて引き込まれました。
発明したものが、悪口で動く移動手段とか、ロケットがリュックから出てきて空を飛んだりとか、それで墜落して地面に埋まっている主人公とか、一つ一つの笑いの要素が私にドンピシャで、スタッフの知恵が炸裂したドラマでした。
田幸 松田さんご自身が企画段階から、台本打ち合わせにも入っていて、俳優が企画者、共同制作者になるという新しい座組みだなと感じました。
あと、各話が独立して、全然違うテンションの話が重なっていくという、連ドラのつくり方としては今までの常識を外す構造になっています。そういう非常に考えて作られた作品でありながら、見るとただただ緩くて笑える。かなり練られているのに、それを感じさせずに楽しめるように見せているのがうまいと思いました。
新しいことをやりつつ、新しいことをやっているドヤ感でなく、楽しくエンタメしてくれる作品。こういうタイプの作品がどんどんつくられるといいなと思います。














