トレードオフを解消するアイデアを考え抜く
ブータン版を島田さんと直江さんにプレイしてもらった。
トレードオフカードの山から出た「課題」は、象などの野生動物が畑を荒らすのを防ぎたいが、ブータンには野生動物を大切にする伝統文化がある。どうすれば畑に来る野生動物を傷つけずに農業ができるかというブータンならではのトレードオフだ。
島田さんは手持ちの中から、農産物の生産地を示したブータンのリソースカードを出して、アイデアを披露した。
「ブータンは丘陵が多い地形なので、農作物に害をもたらすような野生動物が絶対にいない丘陵地に畑を開墾します」
これに続いて、直江さんは「家具」のカードを出した。アイデアをつなげるのが難しい場合は、カードを具体化もしくは抽象化して考えるのが、このゲームでアイデアを出すコツだ。そこで直江さんは「野生動物がいないような丘陵地でも農業の生産性が上がるように、座ったまま収穫ができる設備や椅子などを配置する」アイデアを出した。

本来は次に3人目のプレイヤーがカードを出しながらアイデアのまとめに入るのだが、今回は、島田さんが3人目を演じて「観光」のカードを出した。一見してどのようにつながるのかわからない。島田さんは即興でアイデアを語った。

「ここまで出たアイデアは、象のいない場所で土地を開発して、家具などを使って生産性の高い農場を作ることでした。ただ、このままだと景観が悪くなるなど、また違うトレードオフが起きるかもしれません。そこで、観光客が寄りたくなるような農場のデザインにする。観光地にもなる農場を作るアイデアで課題を解決します」
ゲームの主なルールは「人のアイデアを否定しない」「前の人のアイデアに掛け合わせたアイデアを出す」「全員が協力してトレードオフの解消に挑む」こと。手持ちのリソースカードが少なくなることで、より革新的なアイデアが必要になる。トレードオフを解決するアイデアを考え抜くことが、クロスの面白さであり、醍醐味でもある。
クロスの魅力はブータンでも受け入れられた。島田さんと直江さんがブータンを訪れたのは2024年8月。体験会は100人以上が参加するなど盛況で、予定時間を大幅に延長した。ブータンの農業大臣も訪れて実際に体験し、現地のテレビ局でも取り上げられるなど、大きな注目を集めた。島田さんはブータン国内にも広げることができると手応えを感じている。
「ゲームを開発して終わり、みたいになるのは嫌だと思っていました。そこで、ブータンの方がファシリテーターとなって、イベントや教育現場でクロスを活用して多くの方に届けられるように、ファシリテーターをつとめるためのレクチャーや実践練習などの研修を、ブータンのメンバーに対して行いました。研修によって活用につなげられたと思っています」
直江さんは、このプロジェクトに関わった若者代表として、最後に参加者の前で挨拶した時が最も印象に残っていると振り返った。
「僕が最初に『若者には未来を変える力がある』と言った瞬間に、100人以上が詰めかけた会場からすごい拍手が起こりました。これは嬉しかったですね。本当に自分たちの力で未来を変えてやろうと思っている人が集まっていると感じました。開発の過程も含めて、熱量の高さを肌で感じました」














