一方で弁護側は、事実関係におおむね争いはないとしつつも、田口被告がインターネットバンキングのシステムに入力した情報は、自分の口座情報やパスワード、振込先の口座情報、振り込み金額などで、ウソの情報には当たらないと主張しました。また過去の判例に「誤った振り込みがあれば銀行に知らせる義務があると解するべき」とありますが、田口被告の使っている銀行がすでにこの誤振り込みを知っている状況だったので、田口被告には金を振り込む正当な権限があり、罪には当たらないとしました。

さらに、実質的な被害者である阿武町には金が戻っていて、田口被告との和解が成立し、被害届を出していないと主張。詐欺と言われる実態はなく、きわめてまれな状況で起きた行為で、本人も反省し、再犯のおそれはないなどとして、無罪を求めました。
公判中、目を伏せがちだった田口被告。最後に裁判官から「何か言いたいことはないか」と促されると、立ち上がって正面を向き「このたびは多くの方にご迷惑をおかけして、申し訳ありませんでした」と述べ、審理を終えました。

判決は、来年2月28日に言い渡される予定です。