中日ドラゴンズ「私設応援団」がNPBと12球団を訴える

プロ野球コミッショナー顧問に就いた熊﨑の前に、重大な難題が立ちはだかった。

2008年、中日ドラゴンズの私設応援団が、NPBと12球団を相手取って裁判を起こしたのである。原告は「名古屋白龍会」と「全国竜心連合」、およびその会員約100人だった。

応援団側は、鳴り物入りの応援許可を球団に申請したが不許可とされ、さらに一部の団員については暴力団との関係を理由に全球場への入場を禁止された。

これについて「不当な排除」だとして、「入場禁止処分の取り消し」と「慰謝料の支払い」を求めて提訴したのだ。この裁判は、球界の暴力団排除の行方を左右しかねないものとして注目を集めた。

ところが2010年1月の一審判決で、名古屋地裁の増田稔裁判長が下した判断は、意外なものだった。鳴り物入り応援を許可しなかった点については、NPBと12球団の判断を是認したものの、「入場禁止措置は違法」として応援団側の主張を一部認めた。その上で入場を拒まれた団員一人につき1万1,000円の慰謝料を支払うよう命じたのである。

要するに、暴力団との関係を理由に応援を不許可としたこと自体は妥当だが「観戦まで制限したのは、行き過ぎた権利の乱用である」という判断だった。

NPB側弁護団の木村圭二郎弁護士は、当時をこう振り返る。

「到底受け入れがたい判決だと思った。裁判所は、当該団員がすでに暴力団を離脱し更生していることを理由に、入場は認めるべきだと判断したようだ」
「しかし、更生しているかどうかは不明で、そもそも誰にチケットを売り、誰を入場させるかは主催者の裁量に属するべき――それが私たちNPB側の一貫した主張だった」

余談ながら、木村弁護士、判決文を書いた増田稔裁判長、そして私設応援団側の山下勇樹弁護士はいずれも司法修習39期の同期で、同じクラスで学んだ間柄だったという。二十数年を経て、法廷で相まみえることになった。

もちろん、NPB側は一審判決を不服として直ちに控訴した。

「NPBが球場から暴力団を排除するために定めた『プロ野球観戦約款』の仕組みを正しく理解してくれさえすれば、一審判決のおかしなところは、是正されるはずだと考えていた。だから、控訴審に向けての不安はなかった。問われるのは、裁判所が事実関係を正しく評価できるかだった」(木村弁護士)

舞台は控訴審へ移った。

中日ドラゴンズ私設応援団から訴えられたNPB(日本野球機構)