宇宙を目指すリアル 日本・九州発の技術が切り拓いた小型SAR衛星

『ガンダム』の宇宙世紀で描かれているのは発達したテクノロジーだ。

作品で登場する人型兵器モビルスーツ(MS)は、当初18mほどだったが、進化を続け大型化していく。

現在公開中の映画『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ キルケーの魔女』に登場するΞ(クスィー)ガンダムは28mの設定だ。

公開中の映画『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ キルケーの魔女』に登場するΞ(クスィー)ガンダム

しかし、宇宙世紀のある年代を境にMSは小型化に向かっていく。

これは現実の宇宙開発にも重なる部分がある。実は、今の人工衛星のひとつの流れが小型化だ。

八坂名誉教授が立ち上げたQPS研究所は、SAR衛星と呼ばれる電波を使う観測衛星の小型化を実現した。

SAR衛星で代表的なのは、国が運用する情報収集衛星(レーダ衛星)で、レーダー波を使って夜間や悪天候でも地上を観測できる。既存のSAR衛星は、10mを超える大型のアンテナと1トンから2トン以上の機体が一般的だ。

これに対し、QPS研究所の小型SAR衛星は、重さ100キログラム台を実現した。

アンテナは、直径80センチ、高さ15センチほどまで傘のように小さく畳んだ状態でロケットに収納できる。打ち上げ後は、宇宙で直径3.6mの大きさまで開く機構だ。

QPS研究所の小型SAR衛星(試験モデル)実際に宇宙で活躍している機体と同じ大きさ

打ち上げ時にコンパクトにできることで、従来と比較して、相乗りや小型のロケットを使い、低コストで打ち上げることができる。小型化しても地上の46cmの物体を見分ける高い分解能を持つという。

こうした小型SAR衛星は、世界で5社しか商用化できていない技術だ。そのアンテナの製造を実現したのは、福岡を中心とした中小企業の技術だった。

記者: 宇宙に対して、八坂先生は技術という点で向き合ってこられました。QPS研究所の小型SAR衛星は、従来の大型衛星とは違う発想で作られています。展開式の大型パラボラアンテナは、理論が先にあって、「絶対できるはずだ」という確信を持って、地場のパートナー企業と一緒に作られたと伺いました。その確信というのは、どういった経験から湧き出てきたものなんでしょうか。

八坂: 私は九州大学に来る前や、QPS研究所を立ち上げる前に、NTTなどでアンテナを中心に衛星の開発をやっていました。その中で展開アンテナっていうのはもういくつも作って、いくつも壊し、失敗し、いろいろやってきたわけです。

だから、どういったものがうまくいくか、そうじゃないかっていうのは大体わかるようになってきている。これはまあ、年の功ですかね(笑)

富野: もう「工芸」なんです。アンテナをどれだけ極小から極大にしていくのかということを先生のような研究者や開発者の立場ではやる。

ロケットで打ち上げなくちゃいけないから、直径何十センチか数メートルのロケットの中に収められるものを、最後はアンテナとしてどれだけ大きく展開できるかという命題から始まっています。

そんな厳しい条件の中でアンテナを作るなんていうのは、一般人にはできない。学者とか専門家がやってることは、われわれ一般人には理解できないんですよ。

八坂: まあしかし、富野監督がやられている作品作りも、われわれにはとても想像できない世界ですからね(笑)