"弟は傷一つなく、寝ているようだった"

<伊藤健人さん>
Q. 伊藤さんが住んでいた自宅はどのあたりだった?
「あそこに電柱が立っているかと思うんですけど、本当に厳密な位置というのがもう分からない状態」

伊藤健人さん(32)は震災当時、高校2年生でした。祖父母と両親、男3兄弟で暮らしていました。

末っ子の5歳の律(りつ)くんは家族のアイドルのような存在でした。

15年前に発生した東日本大震災。東松島市は10メートルを超える津波で壊滅状態となり、1100人以上が亡くなりました。

発災当時、市外にいた伊藤さんは大きな揺れに襲われましたが無事でした。父親と次男と合流しましたが、ほかの家族は避難所をめぐっても見つかりませんでした。

そんな時、父親がつぶやくように「遺体安置所に行ってみようか」と話したと言います。

伊藤健人さん
「自分の父親が最初に中に入っていったんですけど、父親の聞いたことのないような泣き声が聞こえので、父親が泣きながら何も言わずにこう手招きするんですね。中に入っていってそこにいたのが律だった」

目の前に横たわる律くんは傷一つなく、まるで寝ているようだったと言います。津波は自宅にいた祖父母と母親、律くんの4人の命を奪いました。

全壊となった自宅で片付けをしていた伊藤さんが見つけたものがあります。律くんの大好きだった青い鯉のぼりです。

伊藤さんは律くんのために物干しざおにくくりつけて鯉のぼりを空に掲げたといいます。