【取材後記】TUF報道部記者・伊藤大貴
今回取材した住職・油谷さんは、10年以上にわたってイタリア・パルマでオペラを学び、家族は現在もイタリアに残って生活しています。日本とイタリアの距離は1万キロ近く。コロナ禍で2年ほど遠く離れた愛する家族に会えていないといいます。それでも「僧侶の資格を取る」という住職だった父との約束を果たすため、帰国後に資格を取り、父が亡くなった今も住職としてつとめています。
寺がどうあるべきかという問いに対し「寺や地域によってあり方は異なる」としたうえで、「地域と関わって気軽に来られるような寺にしたい」と話した油谷さん。それでも明確な答えは出ていないといいます。
物事をストレートに言うイタリアの文化に苦しむ中で、生活の中で何か難しい状況に遭遇したときにどう乗り越えるかを考えるようになったという油谷さん。寺の問題に直面するいま、どう乗り越えるかを改めて考えているのかもしれません。「何事も柔軟にやってみる」。私たちが生きていくうえで大切な姿勢の1つを、法話ではなく油谷さんが身を持って教えてくれたような気がしました。