1月1日に行われるニューイヤー駅伝(第67回全日本実業団対抗駅伝、7区間・100キロ)でGMOインターネットグループの一員として、8年ぶりに駅伝に参戦する大迫傑選手(31・Nike)。2021年の東京五輪後に引退、そして現役復帰。陸上界復帰を喜ぶ高橋尚子キャスターが、大迫選手を取材した。

「陸上界全体が盛り上がったら」

大学卒業後、わずか1年で実業団からプロランナーに転向し、2015年から陸上の本場アメリカを拠点に武者修行を積んだ大迫選手。その後、マラソンの日本記録を2回更新するなど、キャリアも実績も規格外、陸上界の革命児だ。2021年の東京五輪後に引退、そして、現役復帰した大迫選手が今回、ニューイヤー駅伝を走る。

高橋キャスター:
ニューイヤー駅伝は2015年以来なんですよね。

大迫選手:
8年ぶり(当時日清食品グループ)、はい。僕が走ることで陸上界全体が盛り上がったらいいな。そういった思いが見つかったので出走に至りました。

GMOインターネットグループの一員として、ニューイヤー駅伝に参戦。プロランナーが実業団のレースを走る。大迫選手らしい挑戦の裏には、陸上界への熱い思いがあった。

高橋尚子キャスターと大迫選手


大迫選手:
アスリートの活動の幅が広がっていくと思うんですよね。今までは大学を卒業して実業団に入って競技をする、これがメインだと思うんですけど。僕だったり、前の先輩方が、プロになるって道も、第2の選択肢に。第3の選択肢はプロでありながら駅伝に参画をして1年に1回、駅伝を走る。出走料としてある程度のお金をもらえるのであれば、自由に活動ができる、いわゆる自分の時間が空くわけですね。その中でいろいろチャレンジできるなっていうふうに…。

高橋キャスター:
その選択肢を広げたい。その選択肢を実業団だけ、プロだけではなくて色々なやり方が少しづつではなく色々なやり方が少しづつ広がってきていると思うので。

大迫選手:
第2、第3、第4の選択肢は、いつも隣にあるんですよね、ただそれを皆、知らないだけで、それを一回、誰かがやればこういう選択肢があったんだってふうに思えるかなっていうふうに思いましたね。

ランナーにはさまざまな選択肢がある。その信念は、チームへの関わり方にもつながっている。



高橋キャスター:
今回の契約はプレイングディレクター。あまり聞く名前ではありませんけれども。

大迫選手:
今回ただ走るだけでも良かったんですけど、それだとなんか僕自身が、納得できないというか、やるんであればそのチーム全体も強くして僕だけが出てハッピーじゃなくてみんな勝ちにちゃんといけるチームを作りたいなっていうふうに思ったんですね。なので、プレイングディレクターという立場をいただいたんです。
まずチームの目標に対してディレクションしていく。トレーニングメニューも僕の方からアイディアを出していきますし、自分だけが強くなるために情報を抱えるんじゃなくて適切なところに情報を共有していく。
例えばニューイヤー駅伝が一つの大きなゴールだとしたら、そこに向けてどういう大会を選んだらいいのか。この大会出るとちょっと近すぎるよねとか、そういった全体のスケジュール含めてディレクションさせていただいてます。

練習中の大迫選手

練習メニューを提案するのも、プレイングディレクターとしての役割の一つ。ニューイヤー駅伝前、最後の合宿では「逆走(時計回り)しますか」と大迫選手。同じ方向にばかり走ると、体への負荷が偏ることから、逆走を取り入れ、バランスよく体を鍛えることが狙い。この提案にチームメイトは…

吉田祐也選手:
(普段の練習では)やってないですね。大迫さんがアメリカに行ってるときにやっているものです。

村山紘太選手:
やっぱ大迫傑だな、というか。今日、やってやるぞ!というモチベーションがすごく上がりました。

亀鷹律良監督:
今までやってきたことがすべてじゃないと、自分自身いい勉強になっています。

ただ走るだけではない、大迫選手の挑戦は、陸上界の未来のためにー。

大迫選手:
日本陸上界のベースを広げていく部分、実業団のレベルがもっと上がっていけば間接的に世界と戦っていける選手を作っていく、そこにつながっていけばいいなと思いますね。

高橋キャスター:
今度のニューイヤー駅伝の目標ですね。改めて、どんな姿を見せたいですか。

大迫選手:
たすきをつなぐのが8年ぶりなので、どんな雰囲気になるのか楽しみですし、1月1日に今年も1年頑張ろうって、モチベーションを与えられるような走りをしたいなっていうふうに思いますね。






【取材を終えて】
高橋キャスター:
大迫選手の雰囲気が非常にやわらかくなったなって印象を受けました。以前は単身で海外に出て結果を出さなければいけないと非常にストイックでした。でも引退をして視野が広がったんですね。自分の事だけではなくて、後輩のことや陸上界のことを考えることで余裕と自信が生まれたそうです。でも駅伝やマラソンって長いですよね、じつは余裕っていうのがキーワードで、さらなる高みを目指すためにはこれはカギになるかもしれません。

■大迫傑
1991年5月23日生まれ、東京都町田市出身。町田市立金井中学校~佐久長聖高校~早稲田大学。2014年日清食品グループに入社、翌年プロ転向(Nike所属)。2015年からアメリカを拠点に活動。