イカ釣り漁船の上で叱られるも…

林原さんはさらに、久米さんに漁業も体験してもらいたいと考え、知り合いの漁師さんに頼んで、一緒にイカ釣り漁船に乗せてもらったという。

「鳥取の淀江という港からイカ釣り漁船が出ていて、夕方に船を出し、夜中に漁をするんだ。他の漁師さんたちは、久米さんだってことは、テレビに出ている人だってことは知ってるけど特別扱いはせず、『久米!ちゃんと縄を引っ張れよ』と働かせて。久米さんは一晩中ヘロヘロになってやっていた」

イカ釣り漁船で引き揚げ作業中の久米さん(林原さん撮影)

「それで、イカを全部船に揚げ終えて、漁師さんが『お前もくたびれただろう』『はい、疲れました』と。それで錆びた包丁を取り出して、『そこの板でイカを切って、醤油もあるからかけて自分で食え』って。そしたら久米さんは『箸ありますか?』と。『バカ、船の上に箸なんかあるわけね―だろ』『箸がないなら、どうやって?』『お前バカか、手で食えばいいじゃん、手で』って」

「久米さんは漁師さんに世話になって逆らえないんで、刻んだイカを手で鷲掴みにして口に入れたら、『うわぁ、うまいなぁ』ってしみじみ言うんだよ。その表情も含め、今でも全部覚えてる」

この体験が強烈だったのか、久米さんは後年、酒席などでイカを食べる際に「イカは手で食べるのが一番」と講釈していたという。