11月に東京ドームで行われた「高校野球女子選抜」対「イチロー選抜 KOBE CHIBEN」の真剣勝負。憧れのイチロー氏との対戦を待ち望んでいた女子高校生を、高橋尚子キャスターが取材した。
「野球選手になりたい」夢を追い単身北海道へ
「大きくなったら野球選手になりたいです」。6歳の頃から描いていた夢を追いかけている、野呂萌々子さん(駒大苫小牧高・3年)。
東京出身の野呂さんは、野球を続けられる環境を求め、中学卒業後は単身北海道へ。東京の実家を離れ、野球に打ち込んできました。ポジションはショート兼投手で、初球から打ちにいく、積極的なバッティングが持ち味です。

高橋キャスター:
こんにちは、はじめまして。
野呂選手:
失礼します!こんにちは、はじめまして。宜しくお願いします。
高橋キャスター:
北海道は遠いですよ。寂しかったり不安になったりしませんでした?
野呂選手:
苦しいなとかは正直あったんですけど。やっぱり一番は背中を押してくれている家族のためにもっていう感じですね。
野呂選手の父、恵一さんにも話を伺うことができました。
父・恵一さん:
妻も私も、どうせやるなら野球漬けになるぐらいの高校でやって欲しい気持ちもあった。精神的にも鍛えられるかなという思いもありました。

家族への感謝を力に変えて、努力を重ねてきた野呂さんの元に、嬉しい知らせが届きます。イチローさんが女子野球の発展を目的に実施する「高校野球女子選抜」対「イチロー選抜KOBE CHIBEN」のメンバーに選ばれたのです。
野呂選手:
一番はビックリが勝ったんですけど、憧れていた舞台でもあったのですごく嬉しいなと思いました。家族にも結果で恩返しできたらいいなと思います。(試合では)1球目のストライクを振るとかこだわってやってきたので、そこは変えずに自分のプレースタイルでやっていきたいと思っています。
野呂選手はイチロー氏の現役時代の背番号「51」を中学から6年間背負ってきました。

高橋キャスター:
「51」番をつけるきっかけと、萌々子さんにとって、イチローさんはどんな存在ですか。
野呂選手:
せっかくならイチローさんがつけてる「51」と思って付けました。日本球界、世界でも活躍されてますし、やっぱり野球と言ったらイチローさんっていう感じなのですごく憧れです。
高橋キャスター:
東京の実家にお邪魔しましたけど、部屋の中にイチローさんの本がありまして、かなり年季が入って読まれてるのが伝わってきましたけど、たくさん読みましたか?
野呂選手:
辛くなったときは、よく読んでいました。
高橋キャスター:
いつも通りにやることが大切なんだよっていう、「平常心」みたいな言葉が書いてあるページが挟まれていたんですけど、その思いは大切にしていますか?
野呂選手:
中学生の頃から「平常心」という言葉を大事にしていて、ピンチの場面でマウンドに上がることも多かったんですけど、そういう時に「平常心」っていう言葉をずっと大事にしてきたので、思い入れがあります。
高橋キャスター:
(当日は)伸び伸びとやってください。
憧れのイチローさんとの対戦
11月3日の試合当日、東京ドームには父・恵一さんが駆けつけました。ピッチャー・イチローさんとの、夢のような真剣勝負です。

7回表、この日最初の打席に入った野呂選手は初球からフルスイング!
その後、2ストライクに追い込まれると、最後は、変化球に手が出ず見逃し三振。
野呂選手(ベンチに戻って):
球が速い!(次は)初球を捉えきりたいと思います。
9回、1死二塁で迎えた最後の打席は、初球を狙いましたが三飛に倒れました。
東京ドームに駆けつけた父・恵一さん:
全力でやったわけだから「お疲れ様」ということだけ言いたいですね。「51番」を付けてイチロー選手と試合が出来た。めぐり合いとかめぐり合わせということもあるし、51対51っていうのは何とも言えない思いですごく嬉しかった。この先の事を考えると「そういえば、51番を付けて、イチロー選手と試合が出来た」と思うと、もっと感慨深いものが出てくると思う。
野呂選手:
初球から手を出したことは良かったんですけど、捉えきれないのが自分の課題。もっとレベルアップしてこれからやっていきたいと思います。
翌日、東京の実家には、試合を見守ってくれた父と話をする野呂選手の姿がありました。
野呂選手:
こんな幸せなことがあるんだという余韻に浸っていました。
父・恵一さん:
イチロー選手と試合が出来たという、それだけで一生分の親孝行されたような気になるくらい嬉しかったですかね。
彼女が目指す未来は。
高橋キャスター:
これからの萌々子さんの夢を教えて下さい。

野呂選手:
野球に携わった仕事を将来できればいいなと考えています。女子野球はまだメジャーではないので広まっていったらいいなと思います。
卒業後は、巨人の女子硬式野球クラブチーム「ジャイアンツ女子チーム」に入団することが決まった。「憧れのユニホームに袖を通せることを嬉しく思うと同時に相応しい選手になれるよう頑張ります」。幼い頃からの夢を叶えた野呂選手が新たな舞台で輝く。
【取材を終えて】
高橋キャスター:
私自身も学生時代に日の丸をつけた選手から聞いた言葉で人生が変わったんですね。練習後に自主練習で100mを3本だけ続けたことが日の丸につながったと。それだけ?と思いながら始めて見たんです。1日3本、1週間で21本、1か月やると84本になるんですね。ちょっとした努力を続けることで、見える景色がまったくちがうところにたどり着いたのかなって。だからこそイチローさんの一言一言、この向かう姿は彼女たちの人生を変えるはずです。