あることに気付くと本当にビックリ!「シナントロープ」
(以下の文章は「シナントロープ」についての「ネタバレ」を含みます。お読みになりたくない方は次の小見出し「ぼくたちん家」までお進み下さい)
田幸 私が今期一番はまったのは、なんといっても「シナントロープ」(テレ東)です。ヒット漫画「セトウツミ」を描いた漫画家で、脚本家として「オッドタクシー」を手がけた此元和津也さんが脚本ということで期待していました。
1話目を見たらそれぞれの人物が魅力的ですし、同じ言葉を軸に、その言葉が違う使われ方をしたり、違う意味を持たされたり、重なったりずれたりしながら描かれていく。
学校でちょっと浮いていたり、世間からずれていたりする居場所のない若者達が、舞台となるハンバーガー屋でアルバイトをしているんですが、その子たちの家庭環境や抱えている問題、背景が見えてきたり、すれ違っていた人同士の接点が見え、関係性がわかってきたりする中で回を重ねるごとにおもしろくなっていきました。
ところが、第4、5話になって、あることに気付いて、あっ、これはただ会話を楽しむ物語じゃないぞ、えらいドラマが始まったんじゃないかと思って慌てて録画するようになったんです。
何かというと、登場人物が様々に重なったりすれ違ったりする中で、どことも交わらない二人組が存在することに気づいたんです。みんなちょっとずつニアミスしているのに、この二人だけはどことも交わらない。なぜかと思って考えたら、その二人は「時間軸」が違っていることに気付いたんです。
よく見ると「時間軸」がおかしいと気づけるところもたしかにちょこちょこあるんです。
この「時間軸」のずれを使った脚本の緻密さがとにかくすごい。毎回尻上がりにおもしろくなって、ラストまで裏切られ続けて、とにかく圧倒されました。
SNS時代になり、いわゆる「考察系」がはやりました。見る側が深読みしたり、実際の物語がその深読みを裏切ることが目的になってしまったり、はやり過ぎたときには、結局オチはみんなサイコパスみたいになって、「考察系」はピークを超えて破綻してきていると思っていました。
影山 同感です。
田幸 その一方で「しあわせな結婚」(テレ朝・2025)とか「最愛」(TBS・2021)のように、謎解きはあるけれど、人間の心理描写が主軸なのが今のドラマのあり方だと思っていた中で、久しぶりに全く読めない内容でした、いわゆる「考察系」的な脚本でこんなに見事なドラマを見たことがありません。
その一方で、単なる考察ではなく、意外に社会派の側面もあるドラマなんですね。今の若者は夢を見ない、欲がないとか言われますが、夢を見てもどうせ叶わないから見ないようにしているだけ、本当は欲しいものがあるのに欲しくないふりをしているだけ、といった今の若者の心理も見えてきて……。
社会派とうたわずに社会が見えてくる。ストーリーのおもしろさ、会話のリアルさ・新鮮さ、人物の魅力で見せつつ、背景には必ず現代の社会がにじんでくる描き方も、社会派ドラマが成熟した今だからこそ生まれた作品だと思いました。
倉田 「時間軸」については、本当にささやかな違和感なので、ボーッと見ていると本当に気づかない。「そうだったのか」とわかった時がすごく気持ちよくて、そこからはまってしまいました。
影山 これだけの高評価なのに、あまり話題になりませんでした。
田幸 最初から「考察系」に見えていた方が、このドラマに入ってきやすかった人もいたと思いますが、最初はそう見えなかった。考察のおもしろいドラマであることが、半分近くまで行って見えてくる。何のジャンルのどういう物語かがパッとわかるものの方が、最初から入ってくれる人が多いのだろうとは思います。
ただ、私自身は、ジャンルレスな、何を描いているのかわからないものに惹かれるので、こういう作品にはまってしまうんです。ドラマがよほど好きな人でなければ、ジャンル分け、色分けされている方が選びやすいとは思います。その見せ方の難しさはすごく感じます。
倉田 ジャンル分けによって、そのジャンルに興味がない人を排除してしまうリスクもあります。ジャンルをハッキリさせて、そのファンだけを取り込むのか、もっと深いところがあるんだからそれ以外の人にも間口を広げるのか、こういうジャンルだけど、違うすばらしい面があるというのを見つけて紹介していくのが私たちの仕事かなと思います。そこは頑張りたいですね。














