2025年10月期のドラマについて、メディア論を専門とする同志社女子大学・影山貴彦教授、ドラマに強いフリーライターの田幸和歌子氏、毎日新聞学芸部の倉田陶子芸能担当デスクの3名が熱く語る。「ぼくたちん家」「ひらやすみ」「ちょっとだけエスパー」など。             

ダメなヤツなのに応援されちゃう「じゃあ、あんたが作ってみろよ」

影山 「じゃあ、あんたが作ってみろよ」(TBS)はいかがでした。

倉田 人は、変わろうと思えばこんなに変われるんだと実感した作品でした。竹内涼真さん演じる主人公の勝男は、出てきた瞬間から嫌な感じで、この若さで何でこんな亭主関白に仕上がったんだろうと思いながら、彼が痛い目に遭うのを楽しみに見始めたんです。でもその彼が恋人に振られたのをきっかけに、自分で料理をするなど、変わってみようとシフトできるところがよかったですね。

ダメなところがいっぱいある勝男ですが、やはり憎めないのは竹内さんのキャラクターというか、イケメン枠だった竹内さんがこんな役もできるんだと、昭和のお父さんが着ていたような白い下着姿も……。彼の新しい一面を発見できました。

田幸 男性を一方的に断罪せず、こうさせてしまった一因は女性側にもあるという描き方。相手の男性に合わせているうちに、自分が何なのかわからなくなってしまう女性側の悩みも描いていて、よくできた作品でした。

一方、竹内さんの好感度がすごく高いうえに、愛嬌とか愛おしさの芝居がうまいのもあって、みんなが勝男応援モードになっていたようにも感じました。本来は自分に置きかえて、自分自身のアップデートを考えるべきところを「勝男を愛でるドラマ」になってしまっていたかもしれません。

その点で、伝えたいことがちゃんと伝わったかと不安でしたが、SNSでは「うちの夫が勝男みたいなことを言っていたのに、言わなくなった」という声が意外とありました。自分でやらないくせに家事にダメ出ししたり、茶色い料理ばかりとか、出汁がどうとか言わなくなったという女性の書き込みを見て、ああ、ちゃんと伝わったんだと思いました。

そう思うと、強く男性を断罪するドラマにしたら男性は見ていられなかった。しんどくなって男性が離れてしまうと、見てほしい人に伝わらない。このぐらいポップに描いて嫌悪感を抱かせずにメッセージを伝える、その塩梅がうまかった。

ちょっと話を広げると「虎に翼」(NHK・2024)が女性の思いだけでなく、男性のしんどさもきちんと描いているのに「男性が責められている気になる」なんて言う男性がいました。ちゃんと全ての人に向けてつくられているのに、それが伝わらない。

一方で、同時期にヒットした「不適切にもほどがある!」(TBS・2024)は、昭和世代の「男はつらいよ」を描いて、男性はそっちに飛びついた。

同年に放送された2作が、意図していないにしろ、男女を分断させる部分があった。これは難しいな、届けたい人に届かないなというジレンマを感じていたときに、この作品が男性にも届いた。このバランスは今後も参考になると思いました。

影山 出演者に目を転じると、勝男の会社の後輩を演じた杏花さんが印象に残りました。令和女子で、勝男にガンガン物申すけれどもチャーミングさを忘れていないのがよかったです。

その「不適切にも…」の新春スペシャル「新年早々 不適切にもほどがある!」も放送されました。

倉田 楽しく拝見しました。お決まりのミュージカルも含めて定番を押さえつつ、やはり娘が阪神大震災で亡くなるということが一つの軸として描かれていて、明るく楽しくだけではないクドカンさんらしさを感じました。

影山 作品の中で女性首相が誕生するのですが「このドラマは2025年4月に撮影されました」というテロップが入ったのがなかなか粋でした。私たちの方が早かったんだよ、という遊び心はいいですね。

王道を行った「ザ・ロイヤルファミリー」

影山 「ザ・ロイヤルファミリー」(TBS)。

田幸 やっぱり塚原あゆ子さんが演出する日曜劇場は一味違う。勧善懲悪や派閥争いを描かなくても、こんなに飽きさせずに重厚で王道な物語をつくれるということを示してくれました。

倉田 重厚で見応えのある作品でした。何よりよかったのは、一つのことに全力で熱中している人たちの姿が美しかったんです。競走馬にかける情熱が、すごく格好よく美しい。人は一つのことに熱中していくと、やっぱりこうのめり込んでいくよねと、共感して引き込まれました。

あとは目黒蓮さんに存在感があって、作品の流れが大きく変わる節目でしっかり役目を果たしていると感じました。