政府の「デフレ脱却宣言」との兼ね合い
その際に問題になってくるのが、政府の「デフレ脱却宣言」との関係です。
もともとは、「物価目標2%達成」と「デフレ脱却」は、ほとんど同義語でした。しかし、長らく「デフレ脱却」というスローガンが使われるうちに、「デフレ脱却」は単なる物価の状態だけではない、経済全体の好循環を指すと共に、政治的な意味すら持つ言葉になったように思います。
とりわけ政治の世界で「デフレ脱却」と言う言葉が使われる際には、賃金が上がり、所得が増え、経済が成長する、要は、経済的に良い状態を指す言葉として使われるようになっています。「デフレ完全脱却のため」という名目で、これまでも繰り返し、公共事業の拡大などの経済対策が打たれてきたことはご存じの通りです。
「デフレ脱却宣言」となれば、そうした政策の正当性が失われてしまいます。「デフレ脱却」は、この間、政治的には実に都合の良い言葉として、機能してきたのです。
政府の公式見解は、「日本経済はすでにデフレではなくなったが、デフレに戻らないとは言い切れない」というもので、このため「デフレ脱却宣言」を発するに至っていません。
しかし、デフレに戻るリスクが全くなくなる保証などありませんし、物価だけでなく、所得も成長も分配も、すべてうまく回るというような「バラ色」の経済が、今の時代に簡単に実現するとは、誰も思っていないことでしょう。
デフレ脱却宣言が、政治的に、意図的に、先送りされるのであれば、それこそ、健全な経済政策からはどんどん遠ざかってしまいます。「デフレ脱却」は選挙ポスターのキャッチフレーズではないはずです。
内閣府は、デフレ脱却の具体的な指標として、(1)消費者物価、(2)GDPデフレーター、(3)単位労働コスト、(4)需給ギャップの4つの指標をあげています。
すでに、(4)の需給ギャップを除く3つの条件はクリアしており、「概ね条件を満たした」と言える時期は、それなりに近づいているように思います。
日銀が「2%の物価目標達成」を、政府の「デフレ脱却宣言」に先んじて表明することができるのか、高市政権がそれを認めるのか、或いは、政府と日銀が歩調を合わせる形で宣言を出せるのか、このあたり調整は、今年の経済運営の大きな課題となりそうです。














