CTV化の進行と新たな放送市場の模索

通信と放送の融合が語られて久しいが、動画配信サービスの普及・浸透のなかで、2026年、テレビ接触のCTV(コネクテッドTV)化がますます進展することが予測されている。そこでは、テレビ受像機のリモコンに、Netflixなど各動画配信事業者の専用ボタンが設けられたことなどもあり、動画配信サービスの伸張は著しい。

もちろん、既存の放送事業者もこの領域への展開は重視しており、民放各局は独自のオンデマンド・サービスを展開するとともに、民放公式ポータルサイトのTVerへの番組提供をこれまで以上に積極的に展開する方向に進んでいる。特に2025年は、2015年にTVerがサービスを開始してから10年目の節目を迎えた。TVerもそのことを意識して、提供するコンテンツの拡充を図ってきた。

前述したようにNHKは念願だったネット配信業務の本来業務化が認められ、2025年10月から、それまでのNHKのネット配信サービスである「NHK+」を「NHK ONE」にリニューアル。ネット上でのサービスの深化を目指している。その移行に当たっては、若干の混乱も報じられたが、このサービスの安定化と充実は急務であろう。

NHKは、前田晃伸会長時代に行った改革により、組織のスリム化と受信料の値下げが行われ、営業収入が減少したなかで、今後、視聴者に満足してもらえるサービスを提供しつつ、健全な組織運営をどのように行っていくのかに注目が集まっている。

2026年に入って早々に、井上樹彦氏がNHK会長に就任する。井上氏のNHK会長就任によって、18年ぶりにNHK出身者が会長に着任することになる。早々にその手腕が問われることになろう。 

他方で、民放に目を向けてみると、民放事業者の経営環境が厳しさを増していることも確かである。

特にローカル民放局の経営環境は厳しく、近年、前述の総務省「デジタル時代の放送制度の在り方に関する検討会」などで、マスメディア集中排除原則の緩和策などが検討され、具体的な施策が進められているが、2025年には、条件不利地域において小規模中継局をNHKと民放で共同利用する計画の検討が進められた。NHKの出資等に関して経営委員会から異論が出るなどして一度は頓挫しかけたものの、2025年の年末になって、出資形態を変えることで最終的には合意に達した。

民放公式ポータルであるTVerを介して、ローカル民放局の制作するコンテンツが全国に支持されるという現象も、徐々にではあるが見られるようになってきている。TVerのみならず、動画配信サービスのなかで、ローカル局のうま味をどう作っていくのかが問われることになろう。

そのようななかで、2026年1月、総務省が音頭を取る形で「放送・配信システム産業競争力・強化促進協議会」が設立されることが決まっている。国内で制作された映像コンテンツを海外市場での展開をも含めて、その流通の活性化・促進を図っていこうというものである。

ただ、日本の映像コンテンツに関しては、文化的な違いなどもあり、国際市場において、なかなか受け入れられないとの声も少なくない。しかし、日本製の文化的な資産が国際的な市場力を持っていないのかといえば、そこはやりようがまだまだあるのだろう。

2023年、ディズニーが制作したシリーズ「SHOGUN 将軍」は、カナダで制作された本格的な日本時代劇で、24年~25年に発表されたアワードで賞を総なめ。特にエミー賞では、作品賞など18部門での受賞という歴史的快挙となった。受賞後、日本の時代劇作りの技術にこだわった妥協を許さない制作姿勢が、しばしば話題となった。

2026年に入って、再びカナダで、「SHOGUN 将軍2」の制作がスタートするという。

これまで、日本のテレビ番組作りでは、実費回収主義に基づいた制作費の調達・回収、息の長い展開とは無縁の著作権処理、少し変化をしたとはいえ終身雇用・年功賃金が前提の人材育成など、放送産業独特の仕組みが続いてきており、それらがいまだに幅を利かせているのは確かである。

しかし、今後テレビを取り巻く環境が激変するなかで、自らが制作に携わった映像コンテンツを、文化資産として積極的に展開していくことに、その将来性、可能性があることは確実である。

2026年が、テレビの将来を見据えた放送システムの抜本的改革の年になっていくことを期待したい。

<執筆者略歴>
音 好宏(おと・よしひろ)
上智大学新聞学科・教授
1961年生まれ。民放連研究所所員、コロンビア大学客員研究員などを経て、
2007年より現職。衆議院総務調査室客員研究員、NPO法人放送批評懇談会理事長などを務める。専門は、メディア論、情報社会論。著書に、「放送メディアの現代的展開」、「総合的戦略論ハンドブック」などがある。

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